「意気に感じる」なんて言葉はこのご時世、ほとんど死語のような気もするが、この試合を見ていて、思わずその言葉が頭に浮かんだのである。シーズンには「いいな」と思うゲームが何度かあるがこれはその1つだ。5球団の中でも比較的、苦しんでいるといえるDeNA相手に逆転勝利できたのは、それ自体がいいのだけど、逆転した内容、様子にそう思う。

阪神1点ビハインドの7回裏、1死一、二塁となって代打・筒香嘉智を迎えた場面。力投するエース村上頌樹はカウント2-2からの5球目ストレートを外角低めにズバリ…。そう思った。だが判定はボール。これに村上は思わずマウンドでしゃがみ込んでしまう。

いつも冷静な男にしてはめずらしい光景だ。だが次の6球目も真っすぐを投げて空振り三振を奪うと、よほど悔しかったのだろう、思わず大声を出す。さらに2死一、二塁でこれも桑原将志に粘られたものの10球目で中飛に切ると、また感情を出したのである。

その直後の8回だ。ファウルで粘る先頭・坂本誠志郎の様子を見て、CS放送で解説していた佐々木主浩(日刊スポーツ評論家)は「何とかして塁に出ようという感じを受けます」と言う。その坂本が右前打を放ったことをきっかけに阪神打線は2番手・伊勢大夢を攻め、逆転に成功。佐々木は「村上のうしろ姿を見て打線が奮起したんですね」とうなずくのだ。

DeNAは先発スタッフがいいもののブルペンはそこまでではないのでは…という部分があると思うし、それが出た格好になったかもしれない。それでも彼自身、熱い男である佐々木が言う意味はよく分かる。

野球は投手と野手がうまく連動しないと勝てないスポーツだ。投手がいくら抑えても打線がつながらないと勝てない。失点しなければ負けないとは言うけれど、得点しなければ投手がいくら好投しても勝てないのである。当たり前の話だが、それが難しいのだ。

だからこそ投打がいい影響をもたらさなければ、結果は出ない。そこまで無得点だった阪神の野手はマウンドで必死に戦う村上を見て「よっしゃ。やったる」と思っていたはず。こういう熱さがしびれるのだ。もちろん村上がエースだからこその影響だったとも思う。ファンを含め、DeNAサイドには申し訳ないのだけれど、いい光景を見た気がする。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)