甲子園で巨人に勝てていなかったうっぷんを晴らすような勝利だ。主砲・佐藤輝明が放った度肝を抜くような8号ソロを含む今季最多タイの16安打を打線が放って「六甲おろし」が高らかに響いたのである。
ヒーローは多かったけれど、ここでは高寺望夢の名前を挙げたい。佐藤らと並んでのお立ち台にこそ上がらなかったが意味のある働きをしたと思う。個人の活躍はもちろん、チームとしての方向性を感じさせる結果を出したからだ。
「8番・二塁」でのスタメンと聞いて「おお?」と思った。巨人先発は左腕で初ものの又木鉄平だ。中野拓夢が先発を外れている現状、二塁は熊谷敬宥かなと勝手に思っていたのである。だが指揮官・藤川球児の選択は高寺だった。
今季、ここまで左腕から安打を記録していなかった。打数そのものもたったの「3」だが右腕相手ではそれなりに打っているので意外な感じもした。しかし、どうだ。途中出場で2安打を放った前日の好調をキープし、2回の初打席で中前打。さらに2四球を挟んだ後、1点差に迫られていた7回1死満塁では左前に適時打を放つのだ。
1回表、キャベッジがいきなり二ゴロ。最初にこれをさばいたので落ち着いたのかなと思ったが高寺の答えは「いや、最後まで落ち着かなかったですけど」。それでも2番手でこれも左腕・石川達也の初球を仕留めた7回の適時打については「1球で終われてよかった。積極的にいこうと思っていた」と冷静に振り返ったのである。
「スタメンで出ている選手たちの故障とかがあって。次に出ようとしている選手が、いま、練習量を非常に増やしている状態。鍛錬を積みながらゲームに臨んでいる。切磋琢磨(せっさたくま)してレベルを上げようとやってくれている」。高寺について球児はそんな話をした。
近本光司を欠き、さらに中野拓夢も現状、代打である。そんな中、出番をうかがっている選手が抜てきされたところで働く。いいことばかりを書く気はないけれど、まさにプロチームの理想とも言える姿が展開されていると思う。
9回を任されたはずのモレッタがいきなり4失点。球児も言ったように野球のこわさを思い知らされたゲームでもあった。それでも若手が少ない出番を競う現状がある限り、阪神は簡単に落ちていかないと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




