積極的な守備走塁でワンチャンスをつかんだ苫小牧東が、知内にサヨナラ勝ち。12年ぶりに初戦を突破した。1点を追う8回に犠飛で追い付き、9回1死三塁から途中出場の小山太意知三塁手(3年)がサヨナラの犠飛を放った。

 同点の9回1死三塁。絶好の勝ち越し機を迎えても、ベンチの方針はぶれなかった。スクイズなんて、考えない。もちろん、強攻策だ。苫小牧東の汐川裕彦監督(47)は「下位打線だけれど、いつも試合で打っていた打者。打って欲しいという気持ちで見守っていた」と、途中出場の小山に思いを託した。指揮官の期待に応えるように、逆方向へサヨナラの犠飛を放った背番号15は「監督に『思い切り振って来い』と言われた。少し浅いかなと思ったけれど、セーフになって良かったです」と、声を弾ませた。

 攻撃だけでなく、とにかく、守備でも走塁でも、思い切りが良い。5回には、山田右翼手と水谷中堅手が、安打性の打球を、それぞれダイビングキャッチ。打っても3安打の水谷は8回、右翼線の当たりで一気に三塁へ。1死後、犠飛で同点のホームを踏み、サヨナラ劇の布石を打った。「無難にこなそうとやっていても、強豪校との力の差は埋めきれない。それなら、(新チームは)ミスを恐れずにやっていこうという雰囲気になった」と水谷。守備練習から、外野手は前に飛び込むことを恐れない。「後ろにそらしても、カバリングがいると信頼している」。練習の積み重ねが、自信につながっている。

 接戦には、めっぽう強く、春の室蘭地区予選では苫小牧工、鵡川、北海道栄など並み居る強豪を相手に4試合連続で1点差勝利と、精神的にタフネスだ。エース中川、主将の渡辺の2枚看板を中心に、守り勝つ。渡辺は「全員が団結してプレーしたことが、勝ちにつながってうれしい」。古くはセンバツ8強入りの経験もある伝統校。創部70年目の夏、快進撃を狙う。【中島宙恵】

 ◆苫小牧東と南大会 過去、南北分離初年度の59年に優勝1度、準優勝3度(南北分離前にも1度)、ベスト4が3度ある。最近では04、07、12年に出場していたが初戦敗退。今回は初戦(2回戦)に北海を6-5で下した03年以来の勝利だった。同年は準々決勝で駒大岩見沢に4-5でサヨナラ負け。