「東の横綱」東海大相模(神奈川)が、土壇場で底力を発揮した。8回に追いつき、9回裏2死二塁から3番・杉崎成輝内野手(3年)の左越え二塁打で、花咲徳栄(埼玉)にサヨナラ勝ちした。先発の吉田凌投手(3年)、救援したエース小笠原慎之介投手(3年)の2枚看板を打撃陣が助け、準優勝した10年以来5年ぶりの4強進出。神奈川県勢の夏120勝も飾った。19日の準決勝で関東第一(東東京)と対戦する。

 9回裏2死。東海大相模・杉崎が流し打ちした打球が、低い弾道で左翼線へ落ちた。二塁走者の千野が本塁を踏んだことを確認すると、両手の人さし指を高く突き上げた。「すごくうれしかった。うちは投手がいいといわれているので、こういうときこそ野手がやってやろうと思いました」。人生初のサヨナラ打。この日の主役はドラフト候補の吉田でも小笠原でもなく、遊撃を守る杉崎だった。

 2回に先制したが、先発の吉田が逆転を許した。追う展開はこの夏初めて。2点ビハインドの4回途中からはエース小笠原が投入され逆転の時を待った。8回表終了後の円陣。門馬敬治監督(45)から「あと2回か、まだ2回あるか。どう思うかはお前ら次第」と諭されると、ナインは自分を取り戻した。8回裏、長倉蓮捕手(3年)の犠飛で同点とすると、9回裏、杉崎が相手失策から得た好機をものにした。14日に18歳の誕生日を迎えた自分への、遅いプレゼントとなった。

 杉崎の笑顔が消えかけたことがあった。昨秋の神奈川大会準決勝で平塚学園にサヨナラ負けを喫した。「2つエラーして。一生忘れません」。夕食にも手がつけられず、ショックのあまり発熱した。「あの試合が終わって、人一倍練習しようと思いました」。自主練習では約3時間を守備練習に費やし、ティー打撃では試合用より300グラム重い、1・2キロのバットを使用して体の切れを出した。姉萌香さんは、3年生全員分の手作りのお守りを作ってくれた。活躍は必然だった。

 打撃陣が吉田、小笠原を援護し、45年ぶりの全国制覇まであと2勝となった。門馬監督は「ベンチでは『後半にチャンスがくる。粘り強く、しつこく、攻めて攻めて攻めていこう』と伝えた。サヨナラ勝ちはうれしかった」。チームスローガンに掲げる「アグレッシブベースボール」を体現する勝ちっぷりで、堂々4強へ進んだ。【和田美保】

 ◆杉崎成輝(すぎさき・なるき)1997年(平9)8月14日、神奈川生まれ。小学1年から野球を始め、玉縄中では「湘南クラブボーイズ」に所属。3年時に遊撃手として小笠原、長倉とともにジャイアンツカップ優勝。U15(15歳以下)日本代表。東海大相模では1年春からベンチ入り。そろばん1級。50メートル走は6秒0。家族は両親と姉、兄。171センチ、68キロ。右投げ左打ち。