第98回全国高校野球選手権茨城大会の開会式が7日、水戸市民球場で行われた。開幕試合は、土浦湖北が茨城キリスト教学園に7-3で逆転勝ち。10安打を浴びながら、4月から現チーム3代目の主将を務める松延拓輝(ひろき)遊撃手(3年)が、守備で併殺の山を築いて再三のピンチを脱出。2年前に交通事故で亡くなった姉智美さん(享年19)に1勝をささげた。

 最後の打者の遊ゴロを軽快にさばいた松延が、勝利の喜びをかみしめた。大観衆が見守る開幕戦で4併殺を奪い、相手の勢いを断ち切った。打撃では2打数無安打に終わったが「自分のことより、チームが勝ってよかった」とうなずいた。

 公式戦で活躍する姿を見せたかった。高1の6月、姉智美さんを亡くした。大学の野球サークルの友人と食事をした帰り、交通事故だった。2人きょうだいで仲が良く、試合の応援に来てくれた。「最初は家に帰ったら寂しかった。野球がなかったら乗り越えられなかったと思う」。悲しみをこらえて野球に没頭し、1年秋からメンバー入りを勝ち取った。

 現チームは昨秋からブロック予選敗退が続いた。4月の春季大会で敗れた翌日、3代目の主将に名乗り出た。「秋も春も自分のエラーで負けた。自分が変わらなきゃと思った」。当時主将だった吉田託夢(3年)は投手で打線の中軸も担う。仲間の負担も軽くしたかった。母佐知子さん(49)は「ずっとお姉ちゃんにくっついて遊んでいる子だった。今まで主将をやったことがないのに驚いた」。頼もしくなった息子の姿を、感慨深げに見つめた。

 12日の2回戦は常総学院に挑む。松延は「姉は空から見ていると思う。絶対に次の1勝をつかみたい」。家族の夢でもある甲子園出場をかなえるため、最大の難敵を倒す。【鹿野雄太】