日立工(茨城)が、「1イニング限定」の元エースの好救援で3年ぶりの夏1勝を飾った。

 9-7の9回1死一、二塁から吉田拓矢内野手(3年)が、4番手で登板した。四球、空振り三振、二ゴロ。打者3人を14球で無安打に抑えた。右肘痛を抱え、6月中旬に「1イニングなら投げていい」と医師の許可が出たばかりだった。痛み止めを飲んで登板した右腕は「言葉にならないほどうれしい。最後の夏に勝てて良かった」。両校合わせて29安打の乱戦を制し、現チームの公式戦初勝利に喜びを爆発させた。

 5月まで右肘痛を隠していた。昨夏の新チーム結成から投手に転向。「肩には自信があった」と最速137キロをマークした。背番号「1」で臨んだ秋はブロック予選で敗退。直後に右肘が悲鳴を上げた。「歯磨きもできないほど痛かったけど、投げれば痛くなかった」。今春のブロック予選で敗れるまで、周囲に打ち明けなかった。「チームに迷惑をかけてしまった」と治療に専念。夏に間に合わせ、9回一打サヨナラの危機を自慢の直球で救った。

 高校最後の夏、背番号「1」も「10」も下級生に譲った。背番号「11」の能登稜太投手(3年)と2人で相手打線の勢いを止め、雨での中断1時間を含む4時間14分の熱闘を制した。元西武外野手の大友進氏(42)を輩出し、センバツにも2度出場した古豪が復活ののろしを上げた。【鹿野雄太】