1番投手が夏の主役だ。北北海道大会が開幕し、昨夏の準優勝校・旭川実が9-2の7回コールドで旭川東を下し、6年ぶりの夏甲子園へ好発進した。エース右腕&1番打者の陣翔大(3年)が、投げては最速145キロの直球を軸に6回2失点。打っては1安打1打点2得点と勝利に貢献した。

 味方に3-2と逆転してもらった直後の5回表2死満塁、打席は相手の4番。3ボールと押し出しまであと1球に追い込まれ、マウンドの旭川実・陣が自分を取り戻した。伸びのある直球と鋭く曲がるカットボールで追い込むと、最後もカットボールで空を切らせた。「昔なら熱くなって直球で勝負に行った。成長した」と自画自賛。坂口新監督(32)も「変化球連投で勝負が決まった。大人になった」と、目を細めた。

 6回5安打2失点の投手に加え、打撃でも結果を残した。0-2で迎えた4回裏は、先頭打者で四球を選び、逆転をお膳立て。4-2の7回裏無死二塁では右に流し打って走者をかえし、コールド勝利につなげた。3日のソフトバンク戦で「1番投手」で先頭打者本塁打を放った日本ハム大谷について聞かれると「僕は小学生の時から(1番投手の)経験があるので、特に気にならなかった」と、口もなめらかに振り返った。

 幼稚園のころ、おぼえたばかりの3輪車に乗って、自宅から1キロ以上離れた仕事場まで、母暁美さん(43)を追いかけた。「結構、むちゃをする子だった」と父幸成さん(43)は話す。白糠高時代に通算30本塁打を放ち、北大会にも出場した父とキャッチボールを始めるとメキメキ上達。中学時代はKボールで全国優勝も経験した。父は「息子にあっという間に超えられてしまった」と優しく笑う。

 巨人の山下スカウト部長は「うちはピッチャーとしてより打者として評価している」と話すが、本人の目標は当然「二刀流の大谷翔平」だ。この日は日本ハム、楽天などのスカウトの前で、5回に自己最速の145キロをマーク。投打でアピールに成功した。「145キロを出して甲子園に行くことが目標でしたが、達成してしまったので、150キロで甲子園にします」と陣。目標を上方修正し、夢の舞台をとらえる。【中島洋尚】