昨夏の覇者中越が、今春の県大会準優勝の北越に13-2の5回コールド勝ちし、8強入りした。3回裏にエース今村豪(3年)の満塁本塁打などで一挙12点。春季県大会の4回戦で敗れた相手に雪辱を果たした。準々決勝は21日、ハードオフエコスタジアム新潟で行われる。

 ホームインするとうれしさが込み上げてきた。中越・今村は雄たけびを上げた。そして、待ち受けたチームメートのハイタッチ攻めに遭う。

 「詰まった感じがした」。そんな感触とは異なり、ライナー性の打球は右翼席ポール際に飛び込んだ。3回表、5-0とリードして押せ押せムードの1死満塁。今村は北越の2番手、小林太郎(3年)の外角高めの直球を捉えた。「練習試合を通じても初めて」という本塁打が、グランドスラムだ。

 「自分が試合の流れをつくる」と意識していた。中越は3回表、16人の打者を送り込み6安打で12得点。今村に加え、3番坂井琢真(2年)の3ランも飛び出した。ビッグイニングの先頭打者が8番今村だった。この試合のチーム初安打となる右前打で出塁し、猛攻の口火を切った。

 本職の投球でも流れをつくった。5回を3安打2失点。大量得点直後の3回裏に失点したが、それ以外は各回の先頭打者を打ち取った。春季県大会4回戦、中越は北越に0-4で敗れた。今村は6回途中、4失点で降板。その反省から夏に向けて投球練習を工夫した。ブルペンで打者を立たせ、カウントを設定。実戦のイメージを焼き付けた。「北越へのリベンジではなく、自分の投球をする」。冷静さが大勝の土台にあった。

 本田仁哉監督(39)は手放しでメンバーを褒めた。「北越さんは優勝候補筆頭。勝ったのは選手たちが力をつけた成果」。中越は今春だけでなく、昨秋も4回戦で敗退。昨夏の甲子園に出場した前チームと比較する周囲の声が選手の耳にも入っていた。「選手は『今にみていろ』という気持ちだったと思う」(同監督)。募った思いをぶつけ、難敵をねじ伏せた。

 今村は言う。「自分たちの野球をやればどんな相手にも勝てる」。大きなヤマを乗り越え、中越の視界に連覇が入ってきた。【斎藤慎一郎】