聖光学院が光南を6-5で振り切り、自ら打ち立てた戦後最長記録を更新して、10年連続13度目の夏の甲子園出場を決めた。2点リードされた直後の8回裏に同点に追いつき、2死一、二塁から2番磯辺伶也内野手(3年)が勝ち越し右越え二塁打を放った。投げてはエース左腕・鈴木拓人(3年)が5回から登板し、5回4安打3失点で粘り、最後を締めた。

 最後の打者をこん身の外角直球で空振り三振に仕留めると、鈴木拓はマウンド上で雄たけびを上げた。相棒の門井泰寿捕手(3年)と抱き合って担ぎ上げた瞬間、次々と仲間がエースに向かって駆け寄り、歓喜に沸いた。「8回に2点とられたけど、絶対逆転してくれると信じていた。最後までバックを信じて投げられた」。2点リードの9回に1点差まで詰め寄られるも、気合で左腕を振って夏10連覇を成し遂げた。

 絶対的エースが夏を前に不調にあえいでいた。春の県大会準決勝で磐城に打ち込まれ大会7連覇を逃した。昨秋に最速140キロを計測したが、春は球速が伸びず細かい制球力も失った。「ひと冬越えて自分が想像していた成長度とのギャップに苦しんだ」。精神的に伸び悩み、春の東北大会ではベンチ外が検討されるほど調子は上がらなかった。

 夏本番前の3日、ベンチ外の3年生同士の引退試合だった。1年の6月に腰を痛め、2年秋からマネジャーに転身した千葉真啓(3年)が泣きながら高校最後の打席に立ち、安打を放った姿にチームメートは号泣した。鈴木拓は振り返る。「涙が止まらなかった。バット何本振ったとかの理屈ではなくて、1人の人間としての強い思いがヒットにつながった。気持ちが吹っ切れた」。その日の午後に行われた紅白壮行試合では一転、7回無失点と好投。雑念を振り払い、エースとしての自覚を取り戻した。

 今大会はいわき総合との3回戦で9回3安打完封と調子を上げ、5試合で32回2/3を投げ28安打31奪三振8失点と本来の輝きを取り戻した。斎藤智也監督(53)は「大会前は右往左往してたけど、夏の大会の存在が拓人の覚悟を決めさせた。昨日、今日の投球でエースと呼べる内容になった」とほめたたえた。

 10連覇を達成して、満を持して甲子園に乗り込む。過去12度の出場で最高成績は08年、10年、14年の8強だ。鈴木拓は胸を張る。「先輩たちが続けてきただけで、自分たちは連覇を意識してこなかった。甲子園に出る以上は、日本一を狙う」。自分の中の壁を乗り越えたエースに迷いはない。【高橋洋平】

 ◆聖光学院 1962年(昭37)に聖光学院工として創立した私立校。77年から現校名。79年から男女共学。生徒数は739人(女子158人)。野球部は62年創部。部員数は133人。甲子園出場は春4度、夏は10年連続13度目。OBに阪神歳内宏明、オリックス園部聡。所在地は福島県伊達市六角3。新井秀校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦10-0大沼

3回戦4-0いわき総合

4回戦6-5喜多方

準々決勝6-2小高工

準決勝7-3日大東北

決勝6-5光南