第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)千葉大会は決勝が行われ、今春センバツ8強の木更津総合が、3-2で市船橋を破り春夏連続の甲子園を決めた。前日25日の準決勝で右足に死球を受けたプロ注目のエース左腕・早川隆久(3年)が、2失点完投で今大会6戦中5完投目をマーク。春より成長した投球術と精神力で接戦をものにした。

 渾身(こんしん)の106球目だった。早川は、最後の打者が放った打球の行方を見つめていた。遊撃手からの送球がファーストミットに収まった瞬間、両手を天に突き上げた。「5回戦から全部自分がいくつもりでいた」。今大会、全7戦中6試合に登板し5完投。前日の死球の影響なく最後も9回8安打2失点8奪三振。大車輪の活躍で、春夏連続の夢舞台を決めた。

 今春センバツは準々決勝で逆転サヨナラ負け。「春は粘り負けをした。今大会で投げ抜くためにも、制球と3種類の決め球を磨いて、球数を減らすことを心がけた」。千葉に戻ってからは、ブルペンで打者の膝元の高さにヒモを張り、それより低めに投げる練習を徹底した。1日100球以上投げ込む日も設け、縦のスライダー、チェンジアップ、ツーシームの決め球を磨いた。

 甲子園での借りは甲子園で返す。「もう1度甲子園に戻りたい」。悔しさがエースを駆り立てた。結果は数字に表れた。センバツは登板した3試合の1試合平均投球数は131。今大会は、準々決勝から決勝までの3試合で平均112球と大幅に減らした。この日は与四死球2。2-0で迎えた6回は、死球などで2死満塁とピンチを招き、中前へ2点適時打を浴びた。だが、木戸涼外野手(3年)の好返球で、三塁進塁を狙った一塁走者を刺し、同点でとどめた。

 早川は「連投続きで身体的にも精神的にもつらいことがあったが、周りに支えられて、頑張る源だった」と感謝した。7回以降は無失点で踏ん張り、味方の勝ち越しを呼んだ。五島卓道監督(62)は「大エースになってくれた」と脱帽した。粘り負けする早川はもういなかった。「監督から『このチームで伝説を作るぞ』と言われ、やってやろうという気持ち。春のリベンジをしたい」と言い切る。千葉制覇は伝説の序章にすぎない。【湯本勝大】

 ◆木更津総合 1963年(昭38)創立の私立校。生徒数は2088人(女子1141人)。野球部は63年創部で部員数67人。甲子園出場は夏5度目。主なOBは楽天投手コーチ与田剛、DeNA井納翔一ら。所在地は木更津市東太田3の4の1。真板竜太郎校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦2―1柏南

3回戦3―0検見川

4回戦11―0旭農

5回戦4―3専大松戸

準々決勝1―0東海大市原望洋

準決勝6―5千葉経大付

決勝3―2市船橋