絶対的エースの活躍で、3季連続甲子園を勝ち取った。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)埼玉大会決勝が27日行われ、花咲徳栄のプロ注目左腕高橋昂也投手(3年)が、9回4安打4奪三振で聖望学園を完封した。2試合連続完封で、37イニング52奪三振無失点を記録した。

 あと1球で甲子園-。野本真康捕手(3年)からのストレートのサインに、高橋昂は首を横に振った。選んだ決め球はフォーク。124キロで見逃し三振を奪った。いつもはクールなエースだが、派手なガッツポーズで感情を爆発させた。

 「三振を取りほっとして、ああなりました。とりあえず、勝てて良かったです」

 前の打者に三塁打を浴びた。9回2死三塁。この日初めて得点圏に走者を許しても、動揺はない。「昨夏の甲子園で培った」という持ち前の度胸で乗り切った。「昨夏は先輩たちに連れて行ってもらった。今夏は自分たちの力で甲子園に行きたかった」と、2試合連続完封を決めたエースは顔をほころばせた。

 前日26日の準決勝までに、5試合で48三振を奪った。奪三振率15・43と「ドクターK」の異名をほしいままにしていた。ただ、この日は別人の投球を披露した。9回投げて4三振。前日までの「ストレート中心の力投で奪三振」だけが売りではないと見せつけた。

 理由はあった。3回から肩に異変を感じていた。つりそうになったが、岩井隆監督(46)は「それを乗り越えてこそ、エースだぞ」と鼓舞した。直球一辺倒ではなく、変化球も操り、球数を減らして完投。岩井監督も「1年生の時からさまざまなことを教えてきたが、最後に全部出してくれた」と、適応力を喜んだ。

 怪腕の進化が止まらない。準決勝の春日部共栄戦では、アストロズ大慈弥環太平洋担当部長のスピードガンで152キロを計測していた。この日は6球団のスカウトが集まったが、楽天の計測では150キロを記録した。本人は「打線が打ってくれるから、楽に投げられるんです」と謙遜するが、往復3時間かけランニング通学をするなど、努力のたまものだ。スカウトからの評判もうなぎ上りで、複数の球団が今秋のドラフト上位を示唆している。

 歴代の甲子園最速左腕は、09年花巻東の菊池雄星投手。球場表示で154キロをマークしている。記録更新も期待されるが「甲子園では、最初から最後まで自分のピッチングができれば」と、ここはクールな男に戻った。絶対エースが今夏、甲子園の歴史を塗り替える。【杉山理紗】

 ◆花咲徳栄 1982年(昭57)創立の私立校。普通科のほか食育実践科がある。生徒数は1740人(女子722人)。野球部は82年に創部。部員数123人。甲子園出場は春4度、夏は4度目。主なOBはロッテ根元俊一、プロボクサー内山高志ら。所在地は加須市花崎江橋519。田中一夫校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦14-3桶川西

3回戦15-0進修館

4回戦9-0入間向陽

5回戦10-0滑川総合

準々決勝9-0熊谷商

準決勝5-0春日部共栄

決勝6-0聖望学園