15年夏準優勝の仙台育英(宮城)が広陵(広島)に4-10で敗れ、2大会ぶりの準決勝進出を逃した。今夏初先発の左腕佐川光明(3年)がプロ注目の中村奨成捕手(3年)に2安打を浴びるなど、3回途中で6失点KO。打線は11安打を放ったが、12残塁に終わり4点しか奪えなかった。19日の3回戦で春王者の大阪桐蔭を9回逆転サヨナラ勝ちで下したが、頂点までは届かなかった。

 最後まで涙は見せなかった。敗戦のお立ち台に上がった佐川は、淡々と敗因を語り始めた。今夏初の先発マウンドで3回途中6失点。持っている実力を発揮できなかった。先発はこの日の朝食後に、佐々木順一朗監督(57)から告げられていた。

 「リリーフで投げるとは思っていたけど、頭(先発)からとは考えてなかった。拓帆(長谷川、3年)が昨日(19日)一生懸命投げていた。ここで自分が最少失点に抑えて、少しでも拓帆を苦労させないようにしたかったけど、全然駄目だった。甲子園で思ったような投球ができなかった」

 大阪桐蔭を下した前日19日の3回戦では、長谷川が124球で完投していた。連投になるエースを温存する策が結果的に裏目に出てしまった。ブルペンでは調子がよかったが、1回戦の滝川西戦で3回3失点だった佐川を先発に抜てきした佐々木監督は「荷が重かった。6点差は大きかった」と下を向いた。

 佐川の後を受けた長谷川が8回までは1失点と粘っていただけに、3回までの6失点が痛恨だった。長谷川は「朝から言われていたので、途中から投げる気持ちだった。疲れは全くなかった」と気丈に話した。7回には主将の西巻賢二遊撃手(3年)が捕球時に右親指付け根を負傷。1年秋のレギュラー定着後、初めてベンチに退いた。9回2死満塁のピンチには伝令としてマウンドに向かった。2年前の全国準優勝をただ1人知る西巻は「最後までグラウンドに立っていたかった。優勝は難しい」と肩を落とした。

 結束力を最大の武器にして、ここまで勝ち上がってきた。例年のチームとは違って、控え選手もレギュラーに引けを取らない力を発揮した。この日は16人が出場。大阪桐蔭戦での殊勲打は、守備固めの馬目郁也内野手(3年)が打った。佐々木監督は「この代はいい子だらけ。誰が出ても応援できるチーム。言ったことを、自分で考えて行動できる」とほめたたえた。涙を見せなかった西巻は「いい経験ができた。自分の代で甲子園に戻ってこれた。いい3年間だった」と締めくくった。ドラマの続きは、後輩たちが完結させる。【高橋洋平】