佐賀北に逆転満塁弾を浴びた敗戦から10年。悔しさしかなかった。選手らは自らを鼓舞するため、そのシーンが盛り込まれたDVDを何度も見てきたが「私は一番泣いてます。満塁弾の部分は消してほしいんです」と本音をもらす。主将を2度も変え、中村という歴史的スラッガーを育て上げるなど、手塩にかけたナインだった。試合後、一塁側アルプスにあいさつした後「堂々としなさい」とナインに声をかけた。

 昨年秋は力がありながら結果がでなかったチームが、最後の夏は全国決勝の舞台まで上り詰めた。「人間的に成長してくれた。中村もよく打ってくれたが、中村だけでなく、ベンチ外も含めた3年生がチームを支えてくれた」(中井監督)。またも準優勝に終わったが、今年の広陵ナインが残した夏の軌跡は間違いなく来年に受け継がれる。【浦田由紀夫】

 ▼07年夏決勝VTR 広陵が優勢に進めながら佐賀北に逆転負けし、優勝を逃した。広陵が2、7回に2点ずつを挙げ、7回を終えて4-0とリード。先発野村祐輔が10三振を奪い、1安打無失点の好投だった。だが8回1死から連打と四球で満塁。微妙な判定の押し出しで1点を失うと、なおも満塁で副島浩史に3球目のスライダーを左翼席へ運ばれた。まさかの逆転満塁弾を浴び、4-5で屈した。