旭川実が今夏南北海道大会4強の札幌大谷を延長10回の末8-3で下し、08年以来9年ぶりに8強に進出した。笹原颯太捕手(2年)が、9回1死満塁から相手スクイズを決死の守備で阻止。直後の10回1死二塁では決勝の右前打を放つなど、5打数4安打2打点の活躍で勝利に導いた。

 体が勝手に動いた。3-3の9回1死満塁、3ボール2ストライクからの相手スクイズに旭川実・笹原は「バントは頭になかったが、考える前に動いていた」と振り返った。札幌大谷2番・釜萢大司(1年)のバントは目の前に転がった。捕球後、本塁突入する三塁走者・細谷健(2年)が頭から滑り込むも間一髪、左足を伸ばして本塁を踏み、サヨナラ負けを阻止した。

 直後の10回1死二塁、打席に立つ直前、伝令の秋田壮司(2年)が坂口新監督(33)のメッセージを伝えに来た。「お前が決めろ」。「あれでスイッチが入りました」と決勝の適時右前打を放ち、2戦計19回完投と踏ん張るエース坪井陽汰(2年)を、バットで助けた。初戦の北照戦は3打席で死球、犠打、三ゴロと無安打だったが、この日は5打数4安打2打点。「1回戦は投打で坪井頼み。何とかしなきゃという思いが結果につながった」と喜んだ。

 窮地になるほど力を発揮する。「中学時代はピンチで力んでしまう」タイプだったが、ある書籍がきっかけで、考え方が変わった。昨年夏休みの読書感想文の題材に、元広島・黒田博樹投手の生きざまをつづった「1球の重み」を選んだ。おとこ気たっぷりの人生観に触れ「目標に向かい計画を立て、それを淡々と実践する大切さを知った。自分を客観視して、やることを冷静にこなせるようになった」と、状況に動ぜずプレーできる心の素地ができた。

 9月20日、旭川大高との代表決定戦でも1-1で迎えた6回2死満塁で、右中間に決勝の適時三塁打。勝負どころで大役を果たせるチームの司令塔を、坂口監督は「決断が早く緊迫した場面で思い切ったことができる選手」と言う。坪井-笹原と心身ともタフなバッテリーに加え、打線も2戦29安打と好調な旭川実が、北北海道勢では07年駒大岩見沢以来10年ぶりとなる秋制覇を狙う。【永野高輔】