36年ぶり4度目出場の日大山形が、16年優勝の智弁学園(奈良)に大善戦の末、3-5と敗れた。先発した佐藤洸太投手(3年)が巧みな緩急をつけ、7回途中まで好投。中盤以降は連打を許して失点したが、全国舞台で強豪を相手に手応えを得た。打撃陣も9安打を放ち、堂々と渡り合った。バントの失敗や守備面など、細かいミスを改善し、夏こそ山形県勢最高のベスト4超えに挑む。

 佐藤洸が、1番を背おうエースの自覚をマウンドで披露した。圧巻は、2-1と勝ち越した直後の5回裏。先頭打者を緩急で翻弄(ほんろう)。98キロのカーブで追い込むと、130キロの直球で振り遅らせて空振り三振。次打者も外角直球で見逃しの3球三振。「打たせてとることを常に考えていました。でも2ストライクからは全力で腕を振りました」。さらに内角スライダーで空振り三振。3者連続で奪った。最速も2キロ更新して139キロを記録して計7奪三振。「甲子園はすごく良いところだった。練習の励みにして、夏も絶対に帰ってきたい」。8安打4失点の借りを返す決意も強まった。

 昨秋の東北大会で急成長した。背番号11ながら1回戦の学法石川(福島)戦から準決勝花巻東(岩手)戦まで22回1/3を連続無失点。仙台育英(宮城)を完封するなどセンバツ切符の立役者だった。今冬、荒木準也監督(46)からチーム全員に「身長マイナス100キロ」の目標が掲げられた。1人約1合の白米を間食しながら打撃練習。雪上の走り込みに加え、筋力トレーニングにも集中した。毎週月曜日には監督の前で体重測定の中間テスト。182センチ、70キロだった細身の体は、春には77キロに。“不合格”ではあったが、努力は大舞台での躍動につながった。

 2番手の近藤皓介(3年)も特大本塁打を浴びたが、後続は絶妙な制球で封じた。スタンドには前日24日に敗れた由利工ナインが観戦。秋田・にかほ市の上郷野球スポーツ少年団時代からの親友で主将の畑山陸翔捕手(3年)からは試合前に激励メール。「由利工の試合にも刺激を受けたし、陸翔のぶんも甲子園で勝ちたいと思ったのに残念。でもマウンドは心地よかったです」。試合後には夏の再会を誓うメールを返信した。

 課題は、判断を誤りピンチを招いた記録に表れない守備面。攻撃でも送りバントや、スクイズのミスで、取るべき得点を失った。9回表2死走者なしから、昨夏も3番を打った斎藤史弥主将(3年)が放った執念の安打も次への意地。「1球にかける思いをもう1度見つめ直したい。この甲子園で勝たないと」。大舞台で勝つための、意味ある敗戦にするつもりだ。【鎌田直秀】