今夏の甲子園で準優勝した金足農(秋田)・吉田輝星投手(3年)が10日、プロ志望届を提出後、秋田市内の同校で会見を行った。84年夏の全国4強など、春夏計7度の甲子園に導いた元監督の嶋崎久美氏(70)は、プロ野球への意思を固めた後輩に万感の思いで会場からエール。最速152キロの速球に加え、変化球のさらなる成長も求め、同校OBのヤクルト石山泰稚投手(30)に続く存在となることを期待した。

嶋崎氏は“孫”の飛躍を予感するような柔和な笑顔だった。「こんなにたくさんの人たちが集まって会見して、本当にすごいこと。プロ志望届も本人が決めたことなので応援したい。体を壊さないことがプロとして一番のことですよ」。厳しい舞台に挑戦することを決めた男の背中を押した。

金足農OBのプロ選手は、現在は石山だけ。今季は35セーブを挙げて大ブレークしただけに「続く存在になってほしいですよね」と願った。「今まで私が見てきた中でも、まっすぐのキレは一番ですから」。88年に西武から中日に移籍し、当時の星野仙一監督と出会って再生した同校OB小野和幸氏(56)の名前も出した。「良き指導者に巡り会えるかも重要。小野は18勝で最多勝もとれた。吉田にも20勝投手になれる可能性はある」と目尻を下げた。

親心から、あえて課題も挙げた。「スライダーももっとキレが増すと思うし、フォークボールも磨く必要はある。野球の素人がテレビを見ていて『なんであんな球振るんだ』と言うような投手が理想」。それだけに自身が仲介して昨秋から指導を受けてきた正村公弘監督(55)が指揮を執る八戸学院大(北東北・青森)への進学にも名残惜しそうだった。「吉田に合った指導者。おかげで甲子園で準優勝して、今日の会見につながったと言ってもいい。さらに教われば、4年後には間違いなくドラフト1位の即戦力だったと思う」と持論も明かした。

プロ入り後は日本代表のエースになることを宣言した吉田に対し「オリンピックもあるし、楽しみですね。プロでもフィーバーを巻き起こしてほしい」。後輩たちの活躍が元気の源だ。【鎌田直秀】