札幌大谷(北海道)が創部10年目で初優勝を飾った。1安打完投のエース西原健太(2年)は「素直にうれしいのですが、あっという間でした。まだ、実感がわかないです」と振り返った。

札幌市内出身の選手が中心の中、西原は電車で2時間以上かかる赤平市出身。付属の札幌大谷中進学時、硬式で中高一貫指導をしていた同校にあこがれ「環境が良いところでやりたい」と進学を決めた。現在は下宿生活も、中学3年間は電車で毎朝通学していた。

西原を赤平から特急が止まる滝川駅まで約20分、車で送るのが父智洋さん(41)の日課だった。練習試合の日など、集合時間が早く、電車では間に合わないときは午前4時半に起きて、札幌まで2時間以上かけ、直接送り届けたこともあった。ガソリン代がかかるため、中学入学の1カ月後、自家用車を燃費の良いハイブリッド車に買い替え、息子をサポートした。

明治神宮大会前の本州遠征に出発する直前、西原は札幌市内で父と焼き肉を食べ英気を養った。秋季北海道大会の準決勝、決勝は3回持たずに降板し、背番号17の太田流星(2年)に救援をあおいでいた。優勝しても不完全燃焼で「みんなに迷惑ばかりかけているから、神宮大会では役目を果たしたいんだよね」と雪辱を誓っていた。

決勝戦は難敵星稜打線相手に1安打完投。北海道勢では、田中将大(ヤンキース)を擁した05年駒大苫小牧以来13年ぶりの優勝投手となった。神宮のスタンドで見守った智洋さんは、息子からの恩返しに「ここまで勝ち上がったことだけでも驚きです。最初は赤平から通えるのか不安でしたが、本人がやりたいことをやらせてあげて良かった」と喜んでいた。