甲子園初登場の啓新(福井)は存在感を示して、大舞台での2試合を終えた。

開始から雨にたたられ、2回終了時に1時間50分の中断があった。再開したが慣れない点灯試合。ベンチのサインは見づらかった。そんな状況でも、持ち前の粘り強い試合を演じた。

先制、中押し、ダメ押しと許し、終始不利な展開で進んだが、強打の智弁和歌山に15安打を浴びながら、5失点にとどめた。

最終9回の守備と攻撃で、最もアルプス席を沸かせた。先発の安積航大(3年)とともにチームを支えてきた浦松巧(3年)が、最後の1イニングを3者三振で締めた。

サイド右腕は昨秋の公式戦で無失点。初戦の桐蔭学園(神奈川)戦でも救援で2回無失点だった。この試合は6回から救援して7回に2失点。新チームでは初の失点になった。「甲子園はレベルが高いなと改めて痛感しました。負けていたけど最後は全力で投げようと思った」と、敗れて悔いなしの表情だった。

その裏の攻撃。「全球フルスイングしようと思った」と先頭の浦松が左前打で出塁。幸鉢(こうはち)悠樹内野手(2年)も左前打でチャンスを広げ、小野田渉冴外野手(3年)の適時左前打などで2点を返した。寸前で完封を阻止した。

主将の穴水芳喜捕手(3年)は「全国のレベルは高かった。最後に2点取れたのは次につながる。2人の投手を支える打撃を磨いて、また夏に来たい」と決意を語った。

就任1年の植松照智監督(39)は試合前から「今日はバントをしない。攻めていくよ」と伝えていた。8回までイニング先頭打者が3度出塁したがいずれも生かせなかった。9回にようやく打線がつながった。

「智弁和歌山さんは強かったです。甲子園ではのびのび、楽しく、自分たちの野球をやると決めていた。負けていても下を向かず、胸を張ってくれた。(強攻策が)ポイントだったと言われたらそうだが、このチームでやろうとしたのは、打って勝てるかだった」。

選手の自主性を育む指導をしてきた植松監督。「いろいろな方の支えで、この場所に来られた。1つ歴史を刻めたので、これを積み重ねる作業をしていかないといけない」と再出発への思いを込めた。