<高校野球愛知大会:碧南8-3名古屋経大高蔵>◇13日◇2回戦◇春日井市民

6回の攻撃前。0-4と劣勢の名古屋経大高蔵は円陣を組んだ。「この回しかない!」。声を出したのはこの回先頭の吉本岳史主将(3年)。自ら二塁打で端緒を開き、3点を返した。碧南に敗れはしたが「これまでやってきたことを出せました」と、吉本の表情は晴れ晴れしていた。

昨年11月に元プロ選手の監督による暴力行為があり、監督とコーチが退任。当時1年生の主力も1人退部した。動揺が続き、練習もままならなかった。吉本は「立て直すのが難しかった。1人じゃどうにもならず、選手間で話し合いました」と振り返る。

どん底の昨年12月にやってきたのが現在の美濃島(みのしま)惇監督(25)。兄弟校から派遣され、練習を見るようになった。「最初はものすごい警戒されました」と選手が指導者に対してナーバスになっていたという。年齢が近いことを生かして「彼女元気か」などプライベートな話をしながら距離を縮めた。

4月に教諭として正式赴任。監督になったが、3年生は今も親しみを込めて「さん」付けだ。吉本は「美濃島さんのキャラクターが優しくて、僕らに寄り添ってくれた。年明けには打ち解けて、みんなにも覇気が出ました」と感謝。11人いる3年生が入学してから1人も欠けなかったのが吉本の誇り。最後は全員が笑って記念写真に納まった。【柏原誠】