今秋ドラフト候補の智弁和歌山・小林樹斗投手(3年)が、6球団が視察する中、自己最速を2キロ更新する150キロをマークした。

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ネット裏に集まった6球団のスカウト陣が舌を巻いた。智弁和歌山・小林樹が登板したのは4点リードの9回表1イニング、約5分間だけ。だが実力を伝えるには十分だった。「(打者が)反応的に合っていなかったので、まっすぐでと決めました」。エースが選んだのは、オール直球勝負。出だしから140キロ台後半を連発。南部の先頭打者を二ゴロに打ち取ると、そこから150キロに迫る球威で押し2者連続三振。テンポよく力強い直球を投げ込み、1回を球数13球で無安打無失点。阪神のスピードガンで自己最速を2キロ更新する150キロをマークしたほか、オリックスのガンでも149キロを5度記録した。

視察した中日山本スカウトは「まっすぐ1本で試して、アウトコース低めに投げられる。これだけ投げられるのは何人もいない」。巨人岸スカウトも「まだまだ出ると思う。上位の可能性もあるのでは」と絶賛の声が相次いだ。

反撃の余地すら与えない完全投球。力加減は「6、7割」。低めの制球も乱さず、余力を残しての圧倒的投球だった。「最後甘くなってしまったけど、それ以外は良い球がいっていた。100点に近い投球が出来た」と、夏初登板を淡々と振り返った。自粛期間中は下半身を強化に取り組んだ。その成果が確実に数字となって表れた。「自分の中ではいつも通り変わらない感覚。今日くらいの力感で150キロが出たのなら、コンディションは悪くなかったので、継続していきたい」。エースのマウンドは、天井知らずだ。【望月千草】

◆小林樹斗(こばやし・たつと)2003年(平15)1月16日生まれ。和歌山県美浜町出身。松原少年野球クラブで野球を始め、松洋中では軟式野球部に所属。智弁和歌山では1年春からベンチ入り。昨夏の甲子園3回戦の星稜戦で先発し、ヤクルト奥川と投げ合った。50メートル6秒4、遠投110メートル。182センチ、85キロ。右投げ右打ち。