<高校野球和歌山大会:笠田10-6紀北農芸>◇9日◇1回戦◇紀三井寺公園野球場

紀北農芸の先発マスクをかぶったのは背番号1の磯谷祐太投手(3年)だった。

背番号2の下垣那稀捕手(2年)が体調不良で欠場し、ベンチ入りは11人。18・44メートルの距離を挟んで磯谷の役割は普段と違ったが「1カ月くらいは捕手で出場する準備はしていました」と小所帯ならではのバックアップ体制はできていた。

グラウンドに立てなかった下垣の無念を思い、女房役として「変化球を多めに」リードした。3回に5点を先制され、なお1死一塁で今度は救援登板。後続を2人で断った。すると4回に6番岩原宏介内野手(2年)が大会第1号、高校1号ソロを左越えに運んだ。磯谷は「チームメートが点を取ってくれて助けられた」と喜んだが、直後の5回に4失点。7回から再びマスクをかぶった。

それでも8点ビハインドの7回の攻撃でチームが力を結集した。相手投手の乱調に盗塁、敵失、スクイズを絡めて打者10人で一挙4点を返し、コールド負けを阻止。打席とネクストバッタースサークル、一、三塁ベースコーチに選手が立ち、やや寂しいベンチに熱気がこもった。脇田純平監督(35)は諦めない戦いぶりに感激。「春の大会も6点差を追いつく体験をしている。つないでいったら何とかなると信じて戦えた。自分たち大人がコールドかなと決めつけたところから、子どもたちが示してくれた」。昨秋と今春の県大会はともに7回コールド負け。最後まで諦めず現チームで初めて9回を戦い抜いた。2時間33分の初戦敗退。磯谷ら3人の3年生から、下垣ら次代につなぐ濃密な時間だった。【岡崎空日南太】