金光大阪が春夏通じて4度目の甲子園で初勝利を挙げた。エース古川温生(はるき)投手(3年)が東海王者の日大三島(静岡)を4安打完封した。20年前に初出場した際のエースで元中日の吉見一起氏(37)が今冬から特別コーチに就任。薫陶を受けた右腕が快投を演じた。木更津総合(千葉)は山梨学院にタイブレークの末、延長13回、サヨナラ勝ち。東洋大姫路(兵庫)は高知に敗れ、今春で退任する藤田明彦監督(65)に勝利を贈れなかった。

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歴史を背負った9回2死。古川は四球を出しても動じなかった。「最終回も9分の1。普段通りに投げればいい」-。OB吉見氏の言葉がよみがえった。最後の打者にも変わらず、ストライク先行。自己最速を4キロ更新する144キロも出し、空振り三振で締めた。「立ち上がりは緊張したけど少しずつ自分の投球ができた。勝って校歌が歌えて、うれしい気持ちでいっぱいです」と喜んだ。

一冬で大きく変わった。昨秋の近畿大会後、調子を落とした。自信を失い、悩んでいた時、特別コーチになったばかりの吉見氏と話す機会があった。

「エースなんだからそんな不安そうな顔してたらあかんで。立ち居振る舞いをみんな見ているから。背番号1を背負っているのは実力があるから。気持ちの部分は自分で何とかできるから」。自分が甲子園で明徳義塾(高知)に名前負けしてしまった失敗談、プロでエースを担っていた時の経験まで伝えてくれた。

転機になった。「エースとは」と自分に問いかけるようになった。5回2死満塁で4番松永を迎えた。「自分が引いてしまったら戦えない。攻める」と腹を決めた。最後は得意のスライダーを空振りさせ、右こぶしを強く握った。

大会直前、先輩とキャッチボールした。なかなか状態が上がっていなかった古川のボールに力強さが戻っていた。「これなら絶対いけるわ」と背中を押され、甲子園に乗り込んでいた。古川は「たくさんのOBがかなえられなかった1勝を勝ち取れた。満足せず2勝、3勝と積み上げたい」とさらなる躍進を誓った。

02年春、初の甲子園はエース吉見が7失点した。あれから20年。新旧エースが交わり、重い扉が開いた。当時27歳で母校を率いていた横井一裕監督(47)は「感無量です。今まで頑張ってくれたOBの気持ちも出たと思う」と特別な1勝をかみしめた。【柏原誠】

▽金光大阪OBの元中日吉見一起氏(仕事のため来場できず)「完封なので100点満点。バッテリーでつかんだ勝利だと思う。やったのは選手たち。本当にうれしいです」

○…5番貴島の一打で波に乗った。ピンチを断った直後の初回1死満塁で詰まりながら中前に運んで2点先制。「振り切ってヒットになり、うれしかった」。打者陣にも“吉見効果”があった。今月は2度も対戦形式の練習に本気で投げてくれた。2日は14回0点。2度目の15日は16回3点。貴島は吉見氏から本塁打を打っていた。選手たちは口々に「変化球が最初直球に見える」と驚き、高いレベルの球を体感し自信にしていた。