ネクストブレークは、やはりこの左腕だ。「一番いいコンディションで決勝にいける」と大阪桐蔭・西谷監督の先発抜てきに応え、背番号11の前田悠伍投手(2年)が7回を1失点で投げ切った。

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5回に失策絡みで失点も、連打を許さず2安打、毎回の11奪三振。「チームを勝たせる投球を目指してやってきました」。昨秋の明治神宮大会決勝(対広陵)の必勝リリーバーは、センバツ勝利投手になった。

走者を出せば、三振でピンチの芽を断った。「落ち着いているのに、闘争心が見えました」。5回2死一塁で見逃し三振に倒れた近江・津田は、前田のすごみをそう明かした。

滋賀・長浜市の古保利小に入ったころはぜんそくに苦しんだ。水泳で体を鍛え、野球に熱中するように。4歳上の兄詠仁さん(21)とのボール遊びで、当時中学生の兄に打たれて「もう、やめる!」と怒った。勝ち気で、遊びでも真剣だった。伊香に進んだ兄が3年夏の滋賀大会で敗れて帰ると、弟は家で泣いていた。兄の分まで、負けず嫌いだった。

気持ちの強さも、前田を育てた。投手陣の軸と言われても「エースとは思っていない。自分が与えられた試合を投げ抜くだけ」と言う。それでも2試合計13回で3安打1失点、23奪三振。圧巻の内容で、9月のU18W杯の高校日本代表第1次候補に2年からただ1人選ばれた。前田の時代が始まった。【堀まどか】