藤枝明誠の井沢翔(しょう)外野手(3年)は、勝利のために黒子に徹する。控えながら、主将としてチームをけん引。欠かせない存在だ。光岡孝監督(44)も「彼がいなかったら、まとまっていなかった」。前任の静清高時代も含めて、控え選手を主将に指名したのは初だという。異例の抜てきだが、リーダーとしての素質は際立っていた。

井沢は中学時代、焼津リトルシニアでも主将だった。「明誠に入った時からキャプテンになりたかった」。入学から2年時まで、学年をまとめる「責任者」を務め、新チーム発足時に主将に就任。念願はかなったが、苦労も多かった。

部員は3学年で計80人。県内屈指の大所帯をまとめるのは、容易ではない。井沢は「ミーティングの回数を昨年よりも多くした」。試合に絡める機会が少なかったため、行動で示した。自主練習では誰よりも早くグラウンドに到着し、最後の1人になるまで残った。「率先して動けば、ついてきてくれると思った」。背中で引っ張ってきた。

目標は5年ぶりの優勝。「ベンチで一番声を出して盛り上げたい」と井沢。頼れる主将が先頭に立って、築いてきた団結力で頂点を目指す。【神谷亮磨】

◆藤枝明誠 2019年以降、春秋計3度県大会優勝の強豪。投手陣は、右上手のエース山田蓮が引っ張る。昨夏以降に発症した右肩痛は完治し、万全の状態で挑む。最速136キロの直球を軸に、緩急で打ち取る。控えの吉川と中島も、力強さがある。打撃は、1番永島の出塁が鍵になる。バントやエンドランなどの機動力を絡め、つなぐ打線で得点を狙う。チームの方針は「凡事徹底」。堅実な野球で5年ぶりの甲子園出場を目指す。