捕手の次は投手も? 高校通算83本塁打を誇る花巻東(岩手)の2年生スラッガー、佐々木麟太郎内野手が5日、「3刀流」を視野に入れていることが分かった。

秋季県大会地区予選決勝の花巻北戦に捕手で公式戦初先発。阿部颯太投手(2年)を4回2安打無失点に導き、5回からは定位置の一塁守備に就いた。バットでは4打数無安打も、リード面で存在感を発揮。また、今夏は左手人さし指を骨折していたが、右手は自由に使えたため、投球練習を行っていたという。中学3年時は最速137キロのエースだっただけに、来春以降、投手起用のプランも浮上した。

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佐々木麟が万能選手への扉を開けた。曇り空の花巻球場に衝撃のアナウンスが流れた。「3番、キャッチャー、佐々木麟太郎君」。これまでの公式戦は、一塁以外のスタメンはなかったが、この日は捕手で初先発。2日の花北青雲戦(代表決定戦)での1イニング限定起用に続く、公式戦2度目のマスクをかぶり、無失策で4回無失点と司令塔役をこなした。 新たな可能性もある。今夏の岩手大会で左手人さし指を骨折。7月28日にプレートを埋め込む手術を受けた。8月は本格的に打撃、守備練習ができなかったが、佐々木洋監督(47)は「プレートが入っていたときに実は投げていました。捕球できず、投手だけは大丈夫だったので」。手術直後も右手は使えたため、投球練習していたと明かした。 佐々木麟は中学時代の金ケ崎シニアでは投手と三塁が主戦場で、中3時はエースで最速137キロだった。指揮官は今後の投手起用について「一冬を越えればあるかもしれないですが、秋は考えてないです」と来春以降には含みを持たせた。 花巻北戦では捕手で存在感を示した。初回から安定したキャッチング、テンポの良いリードで先発阿部をもり立てた。ワンバウンドのボールも体で止め、後逸しない。「最低限しっかり守り、チームに迷惑をかけないことに集中していました」。3回に最大の見せ場が訪れた。2死一塁、一塁走者が3番打者の1球目にスタートを切る。佐々木麟が強肩を発動。捕球後、すぐさま二塁へ。送球はわずかに左へ外れ、二盗を許すも、公式戦2戦目とは思えない鋭い送球を披露した。 佐々木麟は言う。 「いろんな面を考えて、捕手をどんどん挑戦していきたいですし、複数を守れたら、それはそれでいいことだと思う。とにかくいろんなところに挑戦し、幅広いプレーヤーを目指して頑張りたいと思います」 打撃だけではない。怪物スラッガーの物語は新章に突入した。【山田愛斗】

◆花巻東の今後の予定 24チームが参加する秋季岩手県大会(16~20日、24、25日)に花巻地区第1代表として出場し、9日に組み合わせ抽選会に臨む。県大会で上位3チームに入れば、山形県開催で18チームが参加する秋季東北大会(10月10~16日、山形市、中山町)の出場権を獲得。花巻東は昨秋の東北大会で今夏甲子園を制した仙台育英(宮城)などを破って初優勝し、今春のセンバツ出場を果たした。来春は第95回の記念大会で出場校は2~4校増える方針だが、例年通りなら東北枠は「2」。狭き門の戦いが、まもなく本格化する。