東海大菅生のエース日当(ひなた)直喜投手(2年)が、気迫の投球を見せた。前日の準決勝から連日の完投で、2日で270球を投げ抜き、8-2で二松学舎大付に勝利。2年ぶり4度目の優勝を飾った。来春センバツの出場が濃厚となり、明治神宮大会(18日開幕)の出場権も獲得した。次は、神宮大会で全国の頂点を目指す。二松学舎大付は、2年連続の準優勝となった。

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強風が吹き荒れる神宮。9回1死満塁のピンチ。日当はグラブを胸に当てると、バックスクリーンを向いて目を閉じた。耳に入る歓声が心地いい。「最後は気持ちだぞ」。自分に言い聞かせて、二松学舎大付の4番片井と相対した。初球の直球が二ゴロ併殺打となり、試合終了。人さし指を掲げた。「打てるもんなら打ってみろと思って投げました。うれしいです」。

好きな言葉は「気持ちは技術を上回る」。準決勝から2日連続の完投。合計270球を投げきった。10月23日の3回戦から4試合連続で完投した。

あだ名は“ダチョウ”。その理由は「ダチョウ並みの回復力」の持ち主だから。若林弘泰監督(56)いわく「ダチョウは体力あるんですよ。回復力と免疫力がめちゃくちゃすごい。(時速)60キロで30分とか1時間走れる」のが似ているという。準決勝後、体力を心配する監督に「自分が投げきります」と宣言。見事に有言実行した。

前チームからのレギュラーはおらず、新チームの当初を監督は「最低のチーム」と振り返る。そこから、練習試合で負けていても簡単には諦めない、粘り強さが徐々に生まれてきた。レギュラーほとんどが同じクラスで、担任は若林監督。寮でも、学校でも、グラウンドでも一緒。日当は「最高に楽しい」と言う。「本当にいいチームというか、最高のチームになれた」。みんなで次は全国の頂点へ駆け上がる。【保坂恭子】

◆日当直喜(ひなた・なおき)2005年(平17)7月6日生まれ、東京都墨田区出身。小1から鐘ケ淵イーグルスで野球を始め、東海大菅生へ。1年秋からベンチ入り。7人きょうだいの5番目で、兄2人、姉2人、妹2人。長兄がよき相談相手。50メートル走6秒6、遠投120メートル。憧れの選手はロッテ佐々木朗希。好きな食べ物は母のミートソース。中3で、回転すし50皿を記録。190センチ、95キロ。右投げ右打ち。

○…新井瑛喜内野手(2年)が、バックスクリーン直撃弾を放った。1-1の3回2死一塁、甘く入った直球をとらえた。打球は風にも乗って伸び、公式戦初アーチとなる勝ち越し弾。「ホームランとは思わなくて、二塁まで全力で走りました」と笑顔。昨夜、バックスクリーンへ本塁打を放って喜ぶ自分を「妄想」しており、見事に実現させた。若林監督も「あの本塁打はけっこう効いた。大きかった」と評価した。

○…二松学舎大付は2年連続で、決勝で涙をのんだ。9回1死満塁、4番の片井海斗内野手(1年)が併殺に倒れた。試合後、市原勝人監督(58)は選手たちをベンチにあつめてすぐにミーティングを行った。片井は「ここまで勢いで来て、今日は何もできなかった。チャンスで打つためには心が強くないと打てない。もっと成長したい」と話した。

▽二松学舎大付・市原監督(センバツ当確を逃し)「力負けですね。選手たちは今の力でよく戦った。さらに強いチームにしないといけない」

▽日本ハム・坂本スカウト(東海大菅生・日当について)「気持ち、気迫の投球に尽きる。今大会序盤の直球は138キロだったが、準決勝では最速145キロまで上がった。伸びしろがある楽しみな投手。本物のドラフト候補になれる」