新宿は、大きな1点をつかんだ。

昨年11月に、日米通算4367安打のイチロー氏(49=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)の指導を受けた都立の進学校。高校野球春季東京大会が開幕し、1次予選の初戦で城西大城西に5回コールドで敗れた。試合後のミーティングでは、選手たちの口から「夏に向けて」という前向きな言葉が出た。

無安打のまま、0-13で迎えた5回。先頭の4番、二宮康祐内野手(3年)が左前打を放ち勢いをつけた。連打で1死二、三塁となり、打席には背番号1の加藤康祐投手(2年)。直球にくらいつき、左前適時打。打線がつながり、1点をもぎとった。「コールド負けをする状況で1点を取れたのはよかったけど、追いつけなかったので…」と悔しさをにじませた。

加藤はエースとして先発。しかし変化球を痛打され、2回途中に降板。遊撃に回った。昨年、2日間にわたって指導を受けたイチロー氏は、アップの際から自身の世界を持っていた。同じリズムで同じルーティーンをこなす姿に、刺激を受けた。それから、硬式球よりも重いゴムボールを使った練習など、自分なりのルーティーンをつくり、実行している。「もっと厳しいコースに投げられるように。注目されるくらいの変化球を主体にした、勝てる投手になりたい」と話した。

冬の間はフィジカルトレーニングに励み、実戦に向けた走塁練習にも力を入れてきた。田久保裕之監督(41)は「(新チームの)9月からよく頑張った。伸びてきたよ」と敗戦に肩を落とす選手に声をかけた。

このチームになり、秋季大会も今春も初戦敗退となった。田久保監督が「イチローさんに来ていただいた真価を問われる」と位置づける今年。中沢志弥(ゆきや)主将(3年)は「何もできなかった。実力不足です。この負けを通過点にして、まずは1勝したい」と言葉に力を込めた。