沖縄大会では沖縄尚学が全国最速で2年ぶり10度目の甲子園出場を決めた。

先発した最速147キロ右腕、東恩納(ひがしおんな)蒼投手(3年)が9回を6安打完封。今大会を31回1/3連続無失点の投球でチームを春夏連続の甲子園に導いた。初優勝を目指した日本ウェルネスは決勝で涙をのんだ。

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沖縄尚学のエース東恩納は109球を投じ、歓喜の渦に吸い込まれていった。3-0の9回1死一塁。甲子園を決めた最後の1球は「投手の生命線」と位置づける外角低め直球だった。相手5番を注文通りの三ゴロ併殺。勝利の瞬間、ナインは一斉にマウンドへ駆け寄り、背番号1は輪の中心で右手の人さし指を天へ突き上げた。「素直にうれしい。点を与えたくないなとは思っていたので良かった」と充実の汗をぬぐった。

「点を取られないこと」を信条にする右腕。この日は最速145キロをマークし、春先から下半身トレーニングで磨き上げた直球は威力抜群だった。三塁すら踏ませず、日本ウェルネス打線を寄せつけなかった。今大会はリリーフも含め、全5試合に登板。計31回1/3連続無失点の無双状態。理想とするエース像のたたずまいだった。「球速以上に直球には手応えがあった。打者も手が出ていなかった」と大きな自信を得た。

ピンチほど強気に攻め立てた。バッテリーの大城和平捕手(3年)は「(東恩納は)走者を背負うとギアが上がる。逆境にも燃えるタイプで、球質も変わってくる」と性格を知り尽くす。だからこそ6回1死一、二塁では直球で見逃し三振、最後も自己最速まで2キロに迫る145キロ直球で二ゴロと押し切った。大城和は「要所は変化球で交わし、ピンチでは強気にいけた。(東恩納の)持ち味を引き出せた」と納得顔だった。

新チーム以降は3度目の全国舞台となる。昨秋神宮大会では仙台育英(宮城)に9回4点差をひっくり返されてサヨナラ負け。今春センバツでは3回戦で東海大菅生(西東京)に0-1で敗戦。「1球の重み」を知る東恩納は「夏の甲子園はベスト8がまず目標。悔しさを晴らしたい」。集大成の夏に大舞台で確かな真価を示す。【佐藤究】

 

◆東恩納蒼(ひがしおんな・あおい)2005年(平17)7月24日生まれ、沖縄・豊見城市出身。小2で野球を始め、仲井真中では那覇ボーイズでプレー。沖縄尚学では1年秋に初のベンチ入り。173センチ、72キロ。右投げ左打ち。憧れのプロ野球選手はヤクルト高橋奎二。

 

◆沖縄尚学 1956年(昭31)に私立沖縄高として創立。83年に現校名。普通科に旧体育、難関大・国公立大医学科など5コースがある。生徒数は1073人(女子519人)。野球部は57年創部で部員71人。甲子園出場は春7度、夏は10度目。99年春に沖縄県勢として初の全国制覇を果たし、08年春に2度目の優勝。主なOBはソフトバンク東浜巨投手、ソフトバンク嶺井博希捕手ら。所在地は那覇市国場747。末吉康徳校長。

 

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