<センバツ高校野球:報徳学園3-2愛工大名電>◇22日◇1回戦
センバツが100年を迎えた。敗れて甲子園を後にする敗者には、今夏の甲子園へとつながっていくドラマがある。「涙は夏のため~新しい夢のため~」と題し、さまざまな角度から敗れたチームの物語を紡ぐ。
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サヨナラ負けに肩を落とす仲間を、愛工大名電の祖父江孝太郎内野手(3年)は懸命に励ました。報徳学園戦の1回から6回まで三塁コーチャーズボックスで“監督”を務めた。7回以降はコーチに徹し、10回裏の守りではベンチから声を張り上げた。「こんな経験はめったにできない。ありがたい」。無我夢中だった大舞台を振り返った。
選手兼野球部寮長兼三塁コーチの役割に今春、さらに大仕事が加わった。倉野光生監督(65)の発案で、春の練習試合初戦から試合中のサインを任された。「自分たちで考える」大事さを伝えようとする監督の考えを「貴重な経験を積める」と受け止めた。
この日の2回、先頭の宍戸が安打で出塁。続く鈴木礼へのサインをバントかエンドランかで迷った末、後者を選んだ。中飛で走者を進められず先制機を逃したが、それでも倉野監督は「積極的でいいよ」と背中を押してくれた。1点先制直後の6回2死一塁では鈴木礼に再度エンドランのサインを出し、右前打で一、三塁の好機をつくり出した。
大学まで野球を続け、将来は父利光さん(52)が経営する会社を引き継ぎ、拡大するつもりでいる。試合を担う責任感は、社員の生活を背負う将来に必ず生きる。ただ、高校最後の夏への思いは「選手で戻りたい」だという。【堀まどか】

