<高校野球千葉大会:沼南高柳2-1鎌ケ谷西>◇11日◇1回戦
「もっとこの仲間たちと野球がしたかった」。福島県からの避難生徒、鎌ケ谷西の新田心一郎内野手(3年)は涙で声を詰まらせた。1点を追う8回にはマウンドに上がった。双葉翔陽では今夏はエースとして期待されていた。昨秋新調した投手用グラブは今は手元にない。1回を3人できっちり抑えた。しかし千葉県で迎えた最初で最後の夏は1回戦敗退。「こっちでできた仲間と全力でプレーできてよかった」と一緒に練習した3カ月を振り返り、何度も「楽しかった」と繰り返した。
原発事故の不安は一切仲間には見せなかった。3月下旬にあわただしく市川市に引っ越してきたため、野球道具を持ってきていなかった。しかし仲間の支えもあって不自由なく野球に専念できた。165センチと小柄だが、声を張り上げ仲間を鼓舞する姿はすぐにチームになじんだ。佐藤誠監督(45)は「3年間一緒にいるみたい。どんなときでも前向きでした」と新田の明るい人柄を語った。
今後は中学生のころからの競輪選手になる夢に向かって突き進む。9月には競輪学校の試験に挑戦する予定だ。