<高校野球愛知大会:享栄7-0天白>◇17日◇1回戦

 9回2死まで無安打無得点だった投手が交代した。古豪享栄と天白の1回戦。享栄の先発左腕、杉本力也投手(3年)が9回2死まで3四球のみの無安打投球をみせたが、彦坂明人監督(47)は2番手の加納翔伍投手(3年)に迷わずスイッチ。加納は最後の打者を二ゴロに打ち取り、「無安打無得点リレー」となった。

 中日落合監督の采配が物議を醸した07年日本シリーズ第5戦、山井-岩瀬の「完全リレー」を思わせるシーン。ただ、日本シリーズは1点差、この日は7点差あった。「もったいなかったのでは?」という周囲の声に、彦坂監督はきっぱり言った。「2死になったら交代するからと力也(杉本)には言っていました。非情と思われるかも知れませんが、先を考えてうちのパターンの継投を経験しておきたかった」。

 杉本も「記録は知っていましたけど、それほど意識はしていませんでした。ここまで投げられたんですから」と笑顔で118球、10奪三振の内容を振り返った。昨年11月に左肘遊離軟骨除去手術を受けた。3月に投球を再開したが制球が定まらず、サイドハンドやアンダースローを試したこともあった。本格的に投げられるようになったのは6月から。苦難を乗り越えてのマウンドで、大記録にはこだわらなかった。【坂祐三】