<全国高校野球選手権:唐津商9-4古川工>◇8日◇1回戦

 「がばいエース」が152キロで甲子園デビューを果たした。プロ注目の唐津商(佐賀)のエース北方悠誠(ゆうじょう)投手(3年)が、古川工(宮城)との対戦で1球目にいきなり今大会最速タイとなる152キロをマーク。公立校の投手としては、夏の甲子園で最速記録となった。その後も150キロ台の速球で押し、4失点しながらも毎回の13奪三振で完投勝利を挙げた。2回戦では作新学院(栃木)と対戦する。

 あいさつがわりの1球目で、いきなりスタンドの1万9000人をどよめかせた。スコアボードに掲示された数字は今大会最速タイの152キロ。唐津商のエース北方悠が、初の全国舞台で「がばい」デビューを飾った。

 「立ち上がりは硬さを取るために思い切り投げました」

 試合前、女房役の佐々木に宣言していた「初球は154キロを投げる」という目標には2キロ届かなかったが、いきなり自己最速を1キロ更新した。

 序盤は時折150キロを超える速球で押しまくった。1回から3回まで無安打に抑え、6者連続で空振り三振を奪った。直球を狙われた中盤からは制球重視。変化球中心に140キロ台のカットボールを決め球にした。5回2死一、三塁、1失点後の7回2死二塁の場面で三振を奪ってピンチを脱した。

 「ピンチのところで狙って三振を取りました」

 最後は150キロの直球で空振りを取り13個目の三振を奪った。序盤の大量リードもあり4失点ながら完投で27年ぶりの初勝利を挙げた。

 公立校のエースとして甲子園では最速を出した右腕は、幼い頃から速球にあこがれていた。小学生から投手志望だったが速さにこだわるあまり制球が定まらず、中学まで投手になれなかった。チームメート伊藤の父で小学校時代に北方悠を指導した伊藤泰彦さん(50)は「練習試合で投げるとストライクが全然入らず泣きながら投げていましたね」と話した。

 元ダイエー投手で肺がんで31歳の若さで亡くなった藤井将雄さんは同校OB。父の伸一さん(43)が後援会事務局長をしていた縁で、幼い北方悠も親交があった。甲子園を決めた後、父と弟伸生とお墓へ参り墓前で甲子園の勝利を誓ってきた。「次は力みをなくしてリズム良く投げたい」。その「がばい右腕」で甲子園2勝目をつかみ取る。【前田泰子】