<高校野球大阪大会:上宮8-3岸和田>◇7日◇1回戦◇京セラドーム大阪

 高校野球の地方大会は7日、18大会で開幕し、球児の夏が本格的に始まった。上宮のエース天野仁貴(まさき=3年)は、岸和田戦で完投勝利をマーク。昨夏の交通事故による頭蓋骨骨折から立ち直り、97年春以来15年ぶりの甲子園に向け、好スタートを切った。

 2年分の思いをはき出すように、天野は投げ続けた。9回は3者連続空振り三振。「みんなが支えてくれ、仲谷監督も信頼して下さった。その結果です」とエースは胸を張った。

 昨夏、大阪大会の開幕直前に交通事故にあった。大阪・富田林市内のグラウンドで練習した帰り道、自転車に乗っていて車にぶつかった。左耳上部の頭蓋骨に8センチの亀裂が入り、血を吐いた。脳に損傷はなく、手術は回避したが、大会中は羽曳野市内の病院に入院していた。10日後に退院するとき「絶対に人にぶつからないこと。次はないよ」と言われた。3カ月間は練習もできなかった。

 高校1年8月に右肩を痛め、冬には成長痛で左膝を手術。期待された右腕なのに、ケガにじゃまをされた。それでも「野球をやめようとは思わなかった。同学年にいい投手がいたんで負けたくなかった」とライバルの存在を励みにした。

 今年3月の練習試合でピッチャー返しのライナーを右手人さし指に受けた。まっすぐもスライダーも一時は思うように投げられなかった。今春の大阪府予選で初めてベンチ入りも、完全な体調で投げられたことは1度もない。

 だが練習態度、取り組む姿勢を見ていた仲谷達幸監督(54)から、春に続いて1番を託された。信頼に応えようとこの日、120球を投げ抜いた。「勝ち試合のベストピッチは今日が初めてじゃないですか」と仲谷監督。エースで迎える最初で最後の夏は、忘れられない1勝で幕を開けた。【堀まどか】

 ◆天野仁貴(あまの・まさき)1994年(平6)10月26日、大阪市生まれ。5歳から水泳を始め、小学時代は全国大会出場。茨田(まった)北中1年から学校のクラブで投手として軟式野球を始める。上宮では3年春に背番号1でベンチ入り。50メートル6秒7。好きな選手はロッテ唐川と広島前田健。183センチ、74キロ。右投げ右打ち。