<高校野球南北海道大会:札幌一2-0札幌大谷>◇17日◇1回戦◇札幌円山球場

 昨秋、今春と2季連続全道準Vの札幌一が“3季目の正直”に向け好発進した。エース知久将人(3年)が初出場の札幌大谷を散発4安打、11個の三振を奪い完封。184センチ長身からキレのいいスライダーと140キロ直球で三塁を踏ませぬ会心の投球を見せた。

 初戦を完封で終えた知久が、ほほ笑んでマウンドを降りてきた。村田捕手が主将の高石二塁手がポンと腰のあたりを軽くたたき、エースの好投をねぎらった。4安打完封に11奪三振、与四球3、1度も連打を許さず、三塁を踏ませなかった。背番号1にふさわしい内容に「素直にうれしい。ロースコアの試合で集中を切らさずに投げられました」と会心の123球を振り返った。

 チームは昨秋、今春と全道準優勝。あと1勝の悔しさを味わった。甲子園の懸かった秋決勝は四球から崩れ、延長10回途中で降板、エースの責任を果たせなかった。184センチ、82キロの恵まれた体、関節も柔らかく投手としての素質は十分にあったが、生かし切れていなかった。投手経験のある菊池雄人監督(40)は、知久に高さ約70センチ、幅10センチの平均台で投球フォームを反復させ、重心がぶれない感覚を学ばせた。

 「真っすぐに足を踏み出さないといけない。最初のころは、バランスを崩してよろけてばかりでした」。冬場の練習では15分間、欠かさずに行っていくうちに自然と理想のフォームが身についていった。無駄な力みがあるとバランスも崩れるため、力みも消えるなどの相乗効果があった。この夏地区予選では3試合2完投、与四死球4、失点0、生まれ変わった姿があった。制球が良くなったことでピンチに慌てなくなった。この日も立ち上がり1回表に2死一、二塁と走者を背負ったが、冷静に右飛で切り抜けた。

 「今日のことはもう過去のこと。気持ちを切り替えたい」と知久は前を向いた。あす19日は秋の決勝で敗れた北照が相手。東京都出身で「甲子園のマウンドに立つ」と札幌一に入り最後の夏、「あと3つ負けられません」と今度こそは優勝をつかみに行く。【中尾猛】