<高校野球茨城大会:水戸商11-3水戸桜ノ牧>◇23日◇準々決勝◇水戸市民

 観客の歓声は驚きの声に変わった。水戸商の主砲・山口大樹(ひろき)外野手(3年)が、この日3本目の本塁打を放ったときだった。7回2死一、三塁。独特の豪快なスイングで放たれた打球は、右翼スタンドに着弾。初回の先制3ラン、6回の場外弾に続く高校通算48本目。「狙ったわけではない」と話すが、すべてフルスイングで引っ張った右越え弾だった。

 予感があった。前日練習でバックスイングを微調整。後ろをコンパクトにしてフォローを大きくしてみた。フリー打撃で中越え弾を連発。さらに変化球対策にハーフ打撃で遅い球をセンター返し、体の開きをチェックした。「打てそうな気がしてました。ただ3本目は決勝にとっておきたかったですね」。満面の笑みにジョークも全開だ。

 高校野球のセオリーを無視したアッパースイング。ベンチプレスで110キロを持ち上げるパワーを生かした打法だ。野沢哲郎監督(35)も「注意しているのは右肩の開きだけ。あとは好きに振れと言ってきた」。空振りしてもいいからフルスイングを命じてきた。

 ウエートトレーニング全盛の時代に、大会前、腕立て伏せ1万回を自らに課した。バットをより速く振るためだった。中間テストの期間、練習が軽くなる時間を利用。1日平均500回で、わずか3週間で達成した。「きつかったけど自分で筋肉が付いてくるのが分かった」。胸回りは110センチを超える筋肉マン。常識外れのアッパースイングはこうして継続されてきた。

 全国ではまだ無名だが、入学前の3月にはチームの千葉遠征に同行。練習試合ながら4番を任されたほどの逸材だ。常識外れのパワーがチームをけん引する。【中村誠慈】

 ◆山口大樹(やまぐち・ひろき)1994年(平6)9月7日生まれ、茨城県出身。小2から野球を始め、玉里中時代は友部シニアに所属。一塁手兼外野手。入学後は外野手で1年からレギュラー。家族は両親と妹。左投げ左打ち。175センチ、83キロ。