<全国高校野球選手権:宇部鴻城5-4富山工>◇11日◇1回戦

 宇部鴻城(山口)が富山工(富山)をサヨナラで破り、初陣を飾った。

 泥まみれのユニホームでお立ち台に上った宇部鴻城・樋ノ口吉央右翼手(3年)から、サヨナラ勝ちの熱気が立ち上った。9回1死で中越え二塁打。続く金丸の打球を二塁手がトンネルする間に、樋ノ口はホームに飛び込んだ。「チームの団結力が上回ったんだと思う。甲子園で歌えて、校歌っていいなと思えました」。初出場初勝利で、県勢夏初戦敗退を6で止めた。

 0-4の劣勢を追い上げ、5回に樋ノ口、金丸の連打で同点。なお無死一、三塁のチャンスで、三塁走者の樋ノ口は痛恨のミスをした。打者・大野の初球に出た尾崎公彦(まさひこ)監督(42)からのサインを「二、三塁にするための擬装スクイズだったのに、スクイズだと勘違いして」本塁に突っ込み、三本間でタッチアウト。勝ち越し点を奪えず、とぼとぼ6回の右翼守備についた。一塁側アルプススタンドや右翼席から「切り替えろぉ~!」の絶叫が聞こえてきた。「その声に勇気づけられた」と、9回の長打につなげた。

 昨春中国準優勝も、甲子園につながる大会で「勝てず苦しかった」とエース笹永。今夏は、センバツ4強の高崎健康福祉大高崎(群馬)を参考に足攻も武器に。尾崎監督は「地元の期待を感じていた。校歌を聴いて涙が出ました」と目を潤ませた。【堀まどか】