<高校野球静岡大会:菊川南陵2-1富士市立>◇27日◇準決勝◇草薙球場

 菊川南陵が延長15回の末に富士市立を下し、初の決勝に駒を進めた。9回に追いつかれ、エース大井祐輝(3年)が11回途中で降板したものの、1年の山川直人投手が再三のピンチを切り抜けた。最後は2死一、二塁から先制のホームを踏んでいた辻拓也二塁手(3年)が決勝打。引き分け再試合目前で粘り勝ちした。決勝はあす29日、常葉学園菊川と草薙球場で行われる。

 菊川南陵ナインの強い気持ちが、初の決勝切符を引き寄せた。11回裏1死から大井が二塁打を許す。マウンドに上がった山川は「走者が出たら行くぞ、と言われていた」とすっきりした顔で振り返る。ストライクが入らず2四球で塁を埋めた。「緊張していた」というが、最後は二直に仕留めた。

 その後も得点圏に走者を背負う展開が続いた。それでも山川は「打たれたらしょうがないと声を掛けてくれて、楽になった」と話す。練習試合で20試合ほど登板していたが、公式戦は1回戦の静岡西戦で5回の1イニングを投げたのみ。だが、1年とは思えない堂々としたマウンドさばきだった。

 精神面の強さを強調した。金子誠徳主将(3年)は「普段からメンタルトレーニングを積んでいる」と日頃の成果を話した。ピンチではタイムをかけて「自分の間」をつくるように心がける。投手だけでなく野手も同様だ。スパイクのひもを結び直し、気持ちを落ち着かせた。

 象徴的な場面は14回裏に訪れた。1死一、三塁から満塁策をとった。打球は二塁正面への強いゴロ。教科書通りのホームゲッツーを決めた。辻は「打球が来そうな気がしてた。集中してたので。『練習を出そう』と準備してたので対応できた」としてやったりの表情だった。

 直後の15回に辻が左翼前へ落とし、3時間を超える熱戦に終止符を打った。「チャンスで打ててなかったので、最後くらい打たないと大井に申し訳ない」と辻。準々決勝までの4試合で3安打だったが、これ以上ない価値ある安打を放った。

 決勝は「菊川対決」となる。辻は「春はやられているのでやり返したい」と気合を込めた。県大会2回戦は0-6で敗れている。リベンジを果たし、甲子園切符も手にするつもりだ。【加納慎也】