<高校野球岩手大会:平舘6-5高田>◇13日◇1回戦◇金ケ崎町野球場

 ゆるキャラパワーだ!

 平館が高田に逆転勝ちし、09年以来5年ぶりの初戦突破を果たした。昨年10月に誕生した学校のキャラクター「平丸(ひらまる)」がスタンドで見守る中、1点を追う9回表1死一塁で泉沢夢輝主将(3年)が逆転2ランを放った。

 打った瞬間に右手を上げた。1点を追う9回1死一塁、泉沢が振り抜いた打球は右翼席の芝生にポトリと落ちた。ランニング本塁打の経験はあるが柵越えは人生初。「打っちゃった…」と驚きつつも「3年間がいっぱい詰まった一打だった」。春の地区大会は3戦でヒットは2本のみ。この日も三塁の守備でミスをしていただけに「挽回したかった」。ここぞの場面で主将の意地をみせた。

 5年ぶりの夏1勝。勝利を引き寄せたのは学校のアイドル「平丸」だった。頭は太陽、体は枕がモチーフ。昨年10月に異例の“高校ゆるキャラ”としてデビューして以来、初めて野球部の応援に駆けつけた。美術部が作った特製ユニホームに身を包み、小雨の降る中手を振り続けた。この日、平丸に扮(ふん)したソフトテニス部の小野寺秀真さん(1年)は「すごくうれしい。平丸になって良かった」と喜んだ。

 157センチの身長を買われ昨年「初代平丸」を務めた2番山田帆造(2年)は、1回に先制のホーム、5回にバントヒットから出塁し、同点ホームを踏むなど大活躍。「いるな、と思っていました」。スタンドでひときわ目立つオレンジ色の平丸にパワーをもらい、勝利に貢献した。

 この10年で夏の勝利は09年に水沢農に勝った1度だけ。「夏に勝たなきゃ意味がない」(山田)。追いつき、逆転できたのはどんなにミスをしても全力疾走、全力プレーで1勝を追ったからだった。スタンドの「平丸」とともに、平館ナインがこの夏の岩手を盛り上げる。【高場泉穂】

 ◆平丸

 平館高のマスコットキャラクター。全校生徒から公募し、アンケート投票の末、昨年10月に誕生した。顔は太陽をイメージ。つぶらな目と、厚い唇が特徴。頭には校章のムラサキの花。体は学校活動として市の敬老会に毎年贈っている枕をイメージ、枕カバーのようにフリルが付く。