<高校野球西東京大会:日大桜丘5-3国分寺>◇18日◇4回戦◇府中市民

 「レジェンド校」が逆境を乗り越え、19年ぶりのベスト16に勝ち上がった。日大桜丘が国分寺に逆転勝利。72年センバツで初出場初優勝を飾った名門が、95年以来の5回戦にコマを進めた。

 殊勲のヒーローは、二塁上で恥ずかしそうに両手を上げた。3-3の同点で迎えた8回2死二、三塁。3番竹内隆乃介内野手(3年)が「外の真っすぐが多かったので、狙いました」と振り抜いた打球は、鋭いライナーで左翼を抜け、2走者が生還する決勝の適時二塁打となった。竹内は6回にも同点の中前適時打を放つなど、5打数4安打3打点。試合前、佐伯雄一監督(32)に「後輩に姿勢を示すのはもう十分やってくれた。お前たちらしい野球を見せてくれ」と声をかけられ、リラックスできた。

 72年は夏も甲子園に初出場。だが現在、甲子園優勝校の面影はない。かつてグラウンドだった場所には、隣接する日大の百周年記念館が建てられ、練習場は人工芝のテニスコート3面に変わった。野球部が使えるのは火曜日と金曜日だけ。手狭なため内野ノックが限界で、練習時間も平日は午後4時から6時までに限られる。野球部の強化に力を入れたのは70年代までの一時期だけで、スポーツ推薦も廃止されて久しい。

 ハードとソフトの両面で厳しい環境に置かれても、ナインは創意工夫した。一般的に俊足とされる一塁到達タイム約4秒2を意識し、ストップウオッチで測りながら、ノックでは素早い送球を心掛けた。外野手は校内で直線距離約50メートルほどのスペースをみつけ、背走での捕球を繰り返した。竹内は「グラウンドがなくてもここまでできるんだ、ということを示したかった」と笑顔。予選でも夏8強は79年が最後。この日の逆転劇を、名門復活への序章にする。【岡崎悠利】