<全国高校野球選手権:大垣日大12-10藤代>◇12日◇1回戦

 大垣日大(岐阜)が、甲子園史上最大得点差タイの8点差をひっくり返す大逆転劇で、12-10と藤代(茨城)を破った。1回に8点を先取されたが追い上げ、同点に追い付いた8回に、5番野崎文志内野手(3年)が勝ち越し2ランを放った。

 70歳の名将が両腕を突き上げた。10-10の8回2死二塁。「入ってくれ~!」。ベンチから阪口監督もナインも身を乗り出し、祈る思いで見送った右翼スタンドへの大飛球。打者の野崎は打った瞬間、ガッツポーズをつくっていた。今春の東海大会県予選準決勝・大垣商戦で3-8の7回に7点奪取で勝ってはいたが、それを上回る大逆転。締めたのは野崎の決勝2ラン。「これまでで一番の感覚でした」。高校12本目。殊勲のアーチに笑顔がはじけた。

 初回、エース高田の乱調で、押し出し、ランニング3ランでまさかの8失点。だがその裏、先頭・種田(おいだ)が中前打を放つと、阪口監督は「必ず逆転できるぞ!」と声をあげた。左腕を打つ練習は毎日積んできた。初回に4点を返し、6-10の7回は大久保主将の適時三塁打などで1点差。「この勢いなら行ける、と確信しました」と野崎。その間、ベンチでだれよりも大きな声で「行ける!

 行けるぞ!」と叫んでいたのは「阪口先生でした」とナインは声を合わせた。

 昨夏は開幕戦で有田工(佐賀)に4-5の逆転負け。翌日学校に帰り、50本ダッシュを敢行。「前日まで甲子園にいたのに…悔しくてみじめでした」と種田は言う。冬は岐阜・大垣市の金生山上りに4時間の走り込み。下半身を鍛え抜いた。さらに春の東海大会1回戦・愛知啓成戦の敗戦直後、同じ相手に練習試合を挑んで勝った。「練習試合で勝てるのに公式戦でなぜ負けたのか?」。選手ミーティングは意見を戦わせる場になり、足りない何かをみんなで考えた。

 阪口監督は大会前から「てっぺんを取る」と全国制覇を宣言した。「だって選手を信じてやりたいから」。甲子園37勝監督が信じたナインはとてつもない力を秘めていた。【堀まどか】

 ◆8点差逆転

 甲子園の逆転劇では春夏を通じて最大得点差のタイ記録。97年夏に市船橋が1回戦の文徳戦で3回表終了時1-9から17-10で勝ったのに次いで2度目。