<全国高校野球選手権:東海大四6-1九州国際大付>◇14日◇1回戦

 優勝候補に挙げられていた九州国際大付(福岡)が初戦で姿を消した。自慢の強力打線が、超スローボールを投げる東海大四(南北海道)の西嶋亮太投手(3年)に対し5安打でわずか1得点。この夏限りで勇退する若生正広監督(63)を日本一で送り出すことはできなかった。福岡県勢は2年連続初戦敗退となった。

 九州国際大付打線が西嶋に手玉にとられてしまった。直球は130キロ台ながら、抜群の制球力と緩急で12三振を奪われた。ドラフト候補コンビの3番古沢、4番清水には超スローボールを投げられた。

 4回、古沢の初球で山なりの球を投げられた。「これか!」と試合前から決めていた通りに見逃したが、続くスライダー、直球を連続空振り。「2球空振りなんて(試合で)初めて。集中できていなかった」と知らない間にかき乱されていた。

 6回には2球続けて投げられ超満員4万7000人のどよめきを一身に受けた。古沢は悔しさをバットにぶつけ右翼へ二塁打。続く清水も左翼フェンス直撃の二塁打。2人で1点を奪い意地を見せた。若生監督も「みんな普段のプレーができなかったけど、あの2人は違った」とプロ志望1本の2人の精神力にあらためて驚いた。黄色靱帯(じんたい)骨化症を克服しながら指揮した若生監督は昨秋、新チームになった時2人に「絶対歩けるようになって甲子園でノックを打つ」と夢を伝えた。清水は「監督はリハビリばかり。(自分は)苦しいトレーニングも全然苦にならなかった」と話す。

 若生監督は宿舎に戻っても「会ってもあいつらがボロボロ泣くだけ。追い打ちをかけるだけ」とナインと顔を合わさなかった。退任後、本年度は顧問として学校に残るが、誘いがあれば今後も監督を続ける意向。清水、古沢は「プロで活躍して恩返ししたい」と声をそろえる。九州国際大付での日本一はかなわなかったが、それぞれ新しい夢に向かって進み出した。【石橋隆雄】