<全国高校野球選手権:聖光学院2-1神戸国際大付>◇14日◇1回戦

 泣くな、黒田…。夏初陣の神戸国際大付(兵庫)が1点に泣いた。8年連続夏出場の聖光学院(福島)との対戦で、1-2と惜敗。中学時代から5度手術と故障を乗り越え、最後の夏に甲子園に間に合ったエース黒田達也(3年)は、相手からのねぎらいに号泣した。

 黒田の最後の仕事は一塁コーチャーだった。7回2失点降板。味方が代打攻勢に出た9回、青木尚龍監督(49)の指示で一塁コーチャーに回り、そこから試合終了の整列に走った。相手捕手に「ナイス・ピッチング」と声をかけられた。こらえていた涙があふれた。

 「野球をしていてよかった。そう、思いました」。姫路・灘中時代の右肘に始まり、右手人さし指、両ひざなど5度の手術を乗り越えて最後の夏、甲子園に間に合った。肩を奮わせ、黒田は泣いた。

 夢のマウンドでは、苦しんだ。兵庫大会で67三振を奪ったスライダーを聖光学院に見極められ、3回に四球がらみで失点。4回以降は腕を振り、変化球をベース上に落とすようにした。だが7回2死一、二塁で聖光学院・石垣の決勝打は右翼線上に落ちた。「あの打球が切れなかったのも、8年連続甲子園に出ている学校の力だと思いました」と天を仰いだ。

 ケガにくじけそうになれば、中学1年のときに亡くなった祖父の仏前に勝利球を供える楽しみを思い、心をつないだ。ケガで走れなかった冬は祖母が「頑張ってもダメなときがある。でも無駄なことはないよ」の言葉を入れた押し花の額をくれた。相手チームもたたえた黒田の投球は、不屈の結晶だった。【堀まどか】