第90回全国高校野球選手権(8月2日開幕、甲子園)に県代表として出場する常葉学園菊川が28日、県庁に石川嘉延県知事(67)を表敬訪問した。前田隆一主将(3年)はナインを代表し「笑顔で楽しくやります」と宣言。ほとんどの出場校が口にする「優勝します」といった言葉は一切なかった。過去の常識にとらわれぬ自由な戦いぶりで、29日、甲子園に向かう。

 高校生の表敬訪問としては、異例の独自スタイルを貫いた。常葉学園菊川・前田主将は「甲子園では県内と同じように、笑顔で楽しく精いっぱい頑張ります」とあいさつ。「優勝します」や「日本一になります」といった定番の言葉は一切なかった。昨春に犠牲バントをほとんど使わず日本一に上り詰めた戦術同様、グラウンド外でも定型にとらわれない。

 会の冒頭で石川知事からは「4季連続(甲子園出場)は素晴らしい記録。4回の経験の力が加わり、計り知れないパワーになっている。優勝を期待します」と激励されていた。だが、前田主将が優勝を口にしなかったのには理由がある。過去の失敗に学んだからだ。

 今春センバツでは、県民に連覇を約束して甲子園へ出発した。重圧に苦しみ、まさかの3回戦敗退。思うようなプレーができなかった。同じ轍(てつ)は踏まぬと、前田は「新聞で4季連続、4季連続と言われるけど、すごいなあと人ごとみたい。負けてもいいので、プレッシャーは全然ない」と言い切る。凡退しても失策しても常に笑顔でいた静岡大会同様、思い切りのよいプレーを繰り出すことに集中する。

 知事訪問も4度目となれば、ナインは余裕たっぷり。知事から「監督と部長が一番(日焼けで)黒いが、(選手は)練習が足りないのでは?」とジョークを飛ばされても、笑って受け流した。初戦(対福知山成美=京都)は五輪開幕と同じ8日。知事から「五輪以上に県民を感激させることを祈っている」と言葉を受け、常葉菊川は29日に大阪へ出発する。【斎藤直樹】