<高校野球群馬大会>◇11日◇2回戦

 群馬の太田商が、エース森田和博投手(3年)の力投で6-3と館林商工を破って初戦を突破した。6月のウィンブルドン・テニスで4大大会初勝利を挙げた姉あゆみ(20)が見守る中、8安打を浴びながら要所を締めて完投した。この日は青森、神奈川など4大会が新たに開幕。沖縄ではセンバツ優勝の興南が勝って4強入りしたが、同じくセンバツに出場した嘉手納は敗退した。

 世界を転戦する姉あゆみが見守る中、森田が粘り強く9回を投げきった。最速140キロの直球が武器だが、初戦の緊張で力んだ。6点リードの3回、5本の安打と2四球で3点を失った。5回にも先頭打者を死球で塁に出すなど、再三ピンチを招いた。「フォームがバラバラでコントロールも良くなかった」。計7四死球、8安打を許しての完投には満足できなかった。

 疲れ切った体で球場を出ると、6月のウィンブルドン・テニスから帰国した姉が待っていた。ちょっと照れくさそうにしたが、連戦の合間を縫って駆けつけてくれたことは素直に喜んだ。日本女子ではクルム伊達公子に続く世界89位の姉の存在は「見本になる。自分もがんばろうと思える」と真顔で言った。

 幼いころは姉の影響を受けてテニスをかじったが、野球を始めた小学4年からは投手一筋。高校入学直後、右ひじを痛めて丸1年投げられなかった。野球同様にひじを酷使している姉からケアの仕方を教わり、マッサージをしてもらったこともある。姉の協力を得て苦しい時期を乗り越え、右腕を力強く振り下ろすフォームから、最速140キロの直球を投げるまでに回復した。

 太田商は初出場の96年センバツ以来、甲子園から遠ざかる。初戦で大泉に3-4でサヨナラ負けを喫した昨夏は登板機会もなかっただけに、今年にかける思いは強い。父友洋さん(53)によると姉弟は「頑固で意志が強いところは似ている」という。17日の3回戦(桐生商戦)に向けて森田は「フォームを修正して臨みたい」と話した。【今井恵太】