<高校野球兵庫大会>◇30日◇決勝

 報徳学園が4-0の完勝で市川を破り、2年ぶり14度目の夏の甲子園を決めた。左腕エース大西一成(3年)が7安打8奪三振、無四球で完封勝ち。スーパー1年生右腕田村伊知郎との2枚看板で、春夏通算4度目の優勝に挑む。

 疲れを知らぬサウスポーが、真夏の日差しを力に変えた。終盤、大西がトップギアに入った。8、9回はともに2奪三振の3者凡退。市川最後の打者・西井一仁主将(3年)をスライダーで三振に仕留めると、マウンドで絶叫した。「0点に抑えたのがよかった。バックのおかげです」。静かな言葉の裏に秘めた闘志。被安打7の8奪三振。何より公式戦初の無四球完封。意気に感じた熱投だった。

 雨で決勝が流れた29日。メンバー練習が終わった午後、自分の下宿を永田監督が訪ねて来た。「オマエに任せた」「3年間の集大成を見せろ」「魂の投球を見せてくれ」-。指揮官は「やっぱり3年生。準決勝に勝って、大西の先発は決めていた」というが、大西は「本当にうれしかった」とグッと来た。

 スーパー1年生の台頭があった。田村伊知郎。15歳の右腕は3、5回戦、準々決勝、準決勝に先発して24回2/3で5失点。大西は2、4回戦の先発を含む4試合で16回2/3で4失点。大事な場面を任される後輩に「すごい危機感があった」という。同校出身で2年先輩のソフトバンク怜王にあこがれ、和歌山から入学したが、昨秋はインフルエンザで県大会をリタイア。準々決勝敗退を、センバツ出場消滅を実家のベッドで知った。「申し訳なさでいっぱいで…」。マグマのようにたまった思いが、大一番で爆発した。

 永田監督は「感動しました。準決勝まで7失策だったのが、今日はなし。部員127人の力を見せてもらいました」。大西ら3年生はもちろん、4番は2年越井勇樹、ベンチに田村、永岡駿治と1年も2人。「よほど強い心がないと使わない」という下級生もいる。永田監督も外野手で出場した81年以来2度目の夏の頂点へ。満を持して、春夏4度目の優勝に挑戦する。【加藤裕一】