<高校野球愛知大会>◇30日◇決勝

 昨夏覇者・中京大中京が全国最多188校がひしめく最激戦区を制し、史上7度目の夏連覇への挑戦権を得た。理想的な試合運びで愛知啓成を7-2で下し、2年連続26度目の優勝。今大会は6試合で計3失点と圧倒的な強さを発揮した。今夏で退任する大藤敏行監督(48)の花道を夏連覇という偉業で飾るため、4季連続となる甲子園に乗り込む。

 マウンド上に歓喜の輪ができることはなかった。優勝を決めても王者中京大中京の選手たちは冷静だった。愛知大会連覇も通過点。エース森本隼平と磯村嘉孝捕手(ともに3年)は、ポンとグラブを合わせただけ。すぐに整列に加わった。夏の甲子園連覇への挑戦権を得て、前年優勝校として全員で甲子園に乗り込む。磯村主将は「1人で優勝旗を返しにいくのは嫌だったので」と笑った。

 まったく危なげなかった。初戦(3回戦)から決勝まで1度たりとも、相手にリードを許さなかった。この日も初回に4番磯村の適時打で先制し、4回まで毎回得点で6-0とした。6回に2点を返されたが、直後の7回に2死走者なしから中軸の3連打で1点を追加して突き放した。8つの犠打を決める手堅さと12安打の打力、さらに大会通算3失点という投手力で最激戦区をいとも簡単に制した。

 選手は決勝まで、伸び伸びと戦った。大藤監督はじめコーチ、選手全員がユニホームの下に『強気』と刺しゅうされた、女子マネジャー手作りのお守りを忍ばせた。全国制覇した昨夏は『死に物狂い』だったが、連覇のプレッシャーもかかる今夏は『強気』に変更。大会直前まで主力にけが人が続出したが優勝だけを追い求め、相手を攻め抜く野球で頂点に立った。

 昨年の春から、甲子園出場はこれで4季連続となる。昨春から8強、優勝、8強と結果を出し続けている。磯村ら主力にとって、甲子園は慣れ親しんだ“ホームグラウンド”。この日、優勝の瞬間もあっさりとしていた。胴上げなど、お決まりの儀式もなかった。磯村主将は「胴上げは、もちろん甲子園で優勝してからです」。愛知はあくまで通過点。中京大中京の夏は、ここからが本番だ。【八反誠】