<全国高校野球選手権:延岡学園5-4大分工>◇11日◇1回戦

 大分工・田中太一(3年)の夏は初戦で終わった。延長10回裏1死一、三塁。カウント2-0からスクイズを警戒して外したスライダーが捕手のミットを大きくそれた。

 「スライダーを外に外してファウルを打たせようとした。いつも練習試合で投げていた球だったのに」と悔やんだ。逆転サヨナラ負け。それも自らの暴投という予想もしなかった幕切れに、ゲームセットの瞬間、ただぼうぜんとしていた。「こんな感じで終わったのがとても悔しい」。敗戦が信じられないのか、目には涙はなかった。

 序盤から直球は高めに浮き、変化球は抜けて制球に苦しんだ。直球は145キロをマークしたが、決め球の「太一カーブ」が決まらなかった。「甲子園で20個取りたい」と言っていた三振は10イニングでわずか5。「狙っても取れなかった」と話した。

 4月に右ひじを痛め、投げ込み不足は夏に影響した。6~7割の力しか出せない中でもチームを17年ぶりの甲子園に導いた。今後については「野球をやっていくつもり」とだけ言ったがプロ志望は変わらない。「甲子園は投げやすかったけど、途中から厳しい場所だと思いました」。聖地で学んだ厳しさを胸に田中は上を目指す。【前田泰子】