<全国高校野球選手権:聖光学院1-0広陵>◇12日◇2回戦

 3年前のリベンジだ。聖光学院(福島)がセンバツ4強の優勝候補・広陵(広島)を撃破した。歳内(さいうち)宏明投手(2年)の完封勝利を、堅守とそつのない攻撃で支えた。6回表2死一、二塁の最大のピンチは、根本康一中堅手(3年)の矢のような送球で本塁を死守した。7回裏にはヒットエンドランを足掛かりに先制。最後まで虎の子の1点を守りきった。07年の3回戦で2-8と敗れた相手に借りを返し、2年ぶりに3回戦へ駒を進めた。

 全力で1点を守り、1点をもぎ取った。6回表2死一、二塁。火の出るような中前打に、根本が猛然と突っ込んだ。捕球したとき、すでに二塁走者は三塁を回っていた。息詰まる投手戦。先制点はどうしても与えたくない。狙うは星祐太郎捕手(3年)のミットだけ。全身の力を右腕に集中させ、ワンバウンドでつないだ。起死回生のレーザービームが、失いかけた1点を本塁ベース前で食い止めた。根本は「100回に1回のプレー。神が宿った」と驚きを隠せなかった。

 6月(県北選手権)の福島商戦では、根本の落球をきっかけに敗れた。村島大輔主将(3年)から「気合が入っていないから凡ミスをするんだ」と激怒された。1球の重みを知った根本が、大舞台で反省を生かした。

 ここ一番で勝負強い。福島大会では2割7分8厘と不振だったが、決勝(対光南)で輝きを放った。0-0の5回表に走者一掃の三塁打で試合を決めた。斎藤智也監督(47)が「いぶし銀」と評す根本は、チームの窮地を救ってきた。

 決勝点は全員でつなぐ「聖光らしさ」が生んだ。7回裏1死一塁、5番三瓶央貴(ひろき)右翼手(3年)の打席。初球、2球目はバントの構えを見せ、3球目にヒットエンドランを強行した。外角スレスレの直球に食らい付き、右前へ。一、三塁とチャンスは拡大した。斎藤監督は「1、2球目のバントの構えが利いた。3球目は(バントしにくい)外の際どい球だった。エンドランじゃないと打てない」と振り返る。この攻撃が好投手・有原航平(3年)を揺さぶった。暴投振り逃げで、ついに1点をもぎ取った。

 三瓶は、11日にダイビングキャッチでサヨナラの窮地を救った仙台育英・三瓶将大左翼手(3年)とは小学時代からの顔なじみ。東北勢の躍進を、この日も「三瓶」が後押しした。

 3年前の3回戦で敗れた広陵に雪辱を果たした。甲子園では春は沖縄尚学、夏は明豊(大分)、横浜、PL学園(大阪)と全国の強豪の壁にはね返されてきた。斎藤監督は「それがうちの歴史。その歴史を子供たちが塗り替えてくれた」と目を細めた。それでも大喜びする選手はいない。金星ではなく全国制覇への1歩。ナインの引き締まった顔は、そう語っているようだった。【湯浅知彦】