プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月25日付紙面を振り返ります。1998年の1面では、蝶野正洋と横浜鈴木尚典外野手、三浦大輔投手の合同トレーニングを報じています。

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 横浜鈴木尚典外野手(25)三浦大輔投手(24)が24日、東京・渋谷のスポーツクラブでプロレス流トレーニングに取り組んだ。二人が信奉する新日本プロレスの「nWo軍」蝶野正洋(34)から、乱闘騒動の際の身の処し方までレクチャーされた。1日だけの「弟子入り」も、二人ともすっかり蝶野に感化された格好。鈴木尚は「今年はぶつけられたら向かっていく!」と武闘派宣言まで口にした。今年の横浜はプロレスで強〜くなる!?

 1時間ほどの「合同トレ」で、鈴木尚も三浦もすっかり蝶野に毒されてしまった。「蝶野さんからは気持ちの部分を勉強させてもらいました」と鈴木尚が言えば、三浦も「視野が広がりました」。自信に満ちた声と表情。かつて東映の映画を見て映画館を出たとき、だれもが菅原文太や松方弘樹に成りきったように、二人とも「蝶野」に浸っていた。

バーベルやダンベルなどのウエートトレに挑み、さらに格闘技の「精神修養講座」と、あいなった。

 蝶野 お前ら苦手な球団はあるのか?

 鈴木尚、三浦 阪神(昨年10勝17敗)です。

 蝶野 それならおれたちが甲子園に乗り込んで脅してやるぞ!

 鈴木尚、三浦 ウッヘー、こえ〜。

 蝶野 契約更改はどうだ。オレは丸2日粘って要求額を勝ち取った。容易に妥協するな。粘ることだ。何だ、お前らもうサインしたのか。そいじゃあ悪知恵を入れ損ねたな、ガハハ……。

 蝶野のレクチャーはついに「乱闘」に抵触した。「乱闘の仕方はきちんと教え込んだよ、うん。細かいことは企業秘密で言えないが、自分はけがをしないで相手を痛めつけることだ。深追いはしない。そして最後は、自分は紳士なんだということを証明しないといかん!」。考え込む二人。もちろん、野球はフェアプレーが命。乱闘は感心できた行為ではないが、「もしも」のときの出来事として覚悟しておかなければいけないのも事実だ。

その点を踏まえて、すっかり蝶野の影響を受けた鈴木尚は「去年はチームで乱闘という試合はなかったですね。でも、今年は死球を受けて、向こうの投手が帽子を取って謝らないようなときは“nWo魂”でマウンドに突進しますよ」とドッキリ発言。昨年の首位打者に対するマークがきつくなることを視野に入れた、覚悟の姿勢だ。投手の三浦にしても外国人選手にぶつけて乱闘の引き金になりかねない。「僕も突進されたときの気構えは持っていたい」と言った。

 今回の「合同トレ」は大の蝶野ファンの二人の希望で実現した。蝶野は若い横浜の両選手相手に、乱闘だけではなく、ひたすら闘志の重要性を説いた。「プロレスでも、ロートルはもういらない。これからはオレたちの時代にしなくちゃいけない。お前らだってそうだぞ」。

 こたえた鈴木尚が「松井(巨人)やイチロー(オリックス)とか、若い世代でタイトルを総なめにする時。今年も狙います」と2年連続の首位打者宣言。三浦も「僕も負けないように頑張る」と、投手部門タイトルレースへの参戦を約束した。もう怖いものなし。今年の横浜は、プロレス精神の注入で、ますます強くなる!?

★プロ野球と異競技合同トレーニング

◆相撲 91年(平3)12月。藤田監督下の巨人が玉ノ井部屋で大相撲研修を実施。退団した鈴木望、前田ら4人が参加。玉ノ井親方に「下半身が硬い」と指摘される。96年12月には日本ハム広瀬が武蔵川部屋に入門。

◆Jリーグ 最初の合同自主トレは、93年の水野(元巨人)と川崎武田修宏(現市原)。武田の軽い身のこなしに水野も思わずピッチを上げた。武田は「楽しかった」。今年1月には、ダイエー工藤が秋田豊(鹿島)と。また、巨人橋本もゴンこと中山雅史(磐田)と静岡・磐田で。「ゴンちゃんのツキをもらいたい」(橋本)。横浜駒田は横浜Fのユースチームと。

◆ボクシング 91年5月、巨人杉山が東京・葛飾区の新和川上ジムに入門。「腰を強化し、打撃も強化」(杉山)の狙いで。

◆バスケットボール 91年1月。石毛(西武、現ダイエー二軍監督)は日鉱共石(現ジャパンエナジー)女子バスケットボール部の練習に参加。

◆バドミントン 94年1月。日本ハム島崎、今関らがNTT東京バドミントン部に弟子入り。5年間継続中。

◆鈴木尚、三浦とnWo

大のプロレスファンだった鈴木尚と三浦は、昨年からnWoとの結びつきを強めた。蝶野らnWoから10月6日に横浜スタジアムで応援を受けている。今年1月4日の新日本プロレス東京ドーム大会では、二人が蝶野のセコンドとしてnWoの黒いTシャツを着て入場した。三浦が、蝶野の対戦相手の越中から右太もも裏へキックを受けるハプニングもあった。

◆nWo 米国のプロレス団体WCWのヒール(悪玉)軍団、ニューワールドオーダー(新しい世界の秩序)の略称。96年12月に蝶野が米国へ遠征し、日本人として初めて加入。帰国後、新日本プロレスの乗っ取りを目的に、武藤敬司ら4人でnWoジャパンとして戦いを続けている。

◆蝶野正洋(ちょうの・まさひろ) 1963年(昭38)9月17日、東京・三鷹市出身。84年10月5日、新日本プロレスの武藤敬司戦(埼玉・越谷市体育館)でデビューした。獲得タイトルはNWA世界ヘビー、CWFタッグ、カナダ・インタタッグなど。得意技はSTF、ケンカキック。新日本のG1クライマックスでは91、92、94年優勝の実力者。95年から狼群団、昨年からはnWo結成。昨年のプロレス大賞受賞者。

◆鈴木尚典(すずき・たかのり) 1972年(昭47)4月10日、静岡県出身。横浜高から90年ドラフト4位で横浜入り。昨季は打率3割3分5厘で初の首位打者を獲得した。今季年俸1億円は球団史上最年少の大台突破。185センチ、82キロ。右投げ左打ち。

◆三浦大輔(みうら・だいすけ) 1973年(昭48)12月25日、奈良県出身。高田商から91年ドラフト6位で横浜入り。昨季は初の10勝(3敗)をマークし、今季年俸は倍増の5600万円となった。趣味はプロレス観戦。181センチ、76キロ。右投げ右打ち。

※記録と表記は当時のもの