鉄人をほうふつとさせるフルスイングで、グランドスラムを天に届けた。広島鈴木誠也外野手(23)が、浮いてきたカーブを、強くひっぱたいた。高い弾道の行方は、左翼席の前列だった。まるで天からアシストするように右から左へ打球を後押しする風が吹いていた。2点を追う3回。鈴木にド派手な今季1号、逆転グランドスラムが飛び出した。
「今日は衣笠さんの大事な試合だった。本当に勝ちたかった。思い切ってフルスイングした」
23日に上行結腸がんのため、71歳で亡くなった衣笠祥雄氏の代名詞でもあったフルスイングをしようと心に決めていた。2年ぶり3本目の満塁弾は、ホームで初の体験だった。今季初のお立ち台で「最高でーす!」と2度叫んだ。
衣笠氏が亡くなってから最初の本拠地戦だった。故人をしのんで開始前に黙とうが行われた。チーム全員が喪章を着けて臨んだ。鈴木も訃報を聞いた横浜で「レギュラーである以上、常に試合に出続けないといけない」と一昨年に助言されたことを明かした。特別な意味を持つ試合。勝ちたい執念が生んだ、248日ぶりの1発だった。
追いつかれて迎えた6回は菊池の勝ち越し打に続いた。2死二塁でゴロが三塁ベースを直撃する適時二塁打。「ベースに感謝です。ありがとう、ベース」。5回にチームの中心である丸が中堅守備で負傷交代していた。「僕がいなかった分頑張ってもらっていたので、何とか僕が頑張ろう」との思いもあった。
チームは4連勝。貯金も今季最多の7。緒方監督は偉大な先人に勝利を届け「我々も遺志を受け継いでしっかりと戦っていく」とあらためて誓った。球団初の3連覇と日本一が、何よりの手向け。「鉄人」の魂を継承したチームの中心に鈴木がいる。【大池和幸】



